皇翠〜kousui〜

□act.4
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 だが、愛しい人に戻って来て欲しいジェイドは怯まずに言い返す。

「地球へ攻め入ることもお辞めください!攻め込んで手に入れたとしても、誰も幸せにはなれないわっ!!」
「黙れっ!!」
「あうっ!!」

 ジェイドが思う限りのことを言い放つとデマンドは怒りの表情を顕わにした。

 そして、額の黒い月の印が目になり開眼して、ジェイドを睨みつけた。

 その目が開眼した途端に、ジェイドの身体が金縛りにあったかのように身動きがとれなくなった。

(あの…目は…?)

 身動きが自由にとれず苦しむ中で、デマンドの額に現れた目をじっと見つめた。

「私に盾突くことは許さん!私に忠誠を誓うのだっ!」

 暗示を掛けるようにデマンドはジェイドに言う。

「力では……何も…解決…し…ない…わ…」

 目の術から必死に抗いながら、ジェイドは尚も思いを伝える。

「なにっ?」

 デマンドは目の術を以ってしても、服従しないジェイドに目を疑った。

 そして、額の目を閉じる。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 デマンドの目の術に身体を縛り付けられていたジェイドは、やっと解放されて、息を整えながら強張った身体を解す。

「なぜ?我が<邪視>の力に操られないのだ?」

 ジェイドには<夢見>の能力があるからなのかとデマンドは考えた。

「それは…?」

 ジェイドはデマンドに額の目のことを訊いた。

「ワイズマンからもらった力だ」

 ワイズマンからもらった第三の眼、<邪視>は今、ジェイドにしたように人を金縛りに掛けたり、洗脳したり、時には衝撃を与えることもできることを話した。

「この邪黒水晶もワイズマンからもらったものだ」

それと共に耳飾りに触れると邪黒水晶のことも話すと、これを一族にこれから渡すのだとデマンドは言う。

 邪黒水晶から発されるエネルギーはジェイドにとっては未知で邪悪にしか感じられない。

 その邪悪な気にデマンドは蝕まれている。

 ジェイドはもう何を言ってもデマンドには伝わらないのだということを改めて思い知った。

 その場に脱力してしゃがみ込んでしまう。

「もう私に逆らうな」

 新たに得た大きな力を見せつけると、そう言ってデマンドは部屋を出て行った。

「・・・・」

 ジェイドはしゃがんだまま黙り込んでいる。

 そこへワイズマンが近づいて来た。

「さすがは<夢見>の姫。プリンス・デマンドに授けた我が<邪視>の力にも支配されないとは…」

 ワイズマンは感心していた。

 ジェイドはワイズマンの声を聞きながら思い返していた。

 この声。

 割れたような低い声。

 夢の中で何度か聞いたあの声と同じ声。

 <夢見>で視たのはこの人物だったのだ。

 アレは夢の中で言っていた。


『お前の力が欲しい』


(私の力?)

 どういうことなのだろうか。

「<夢見>姫?」
「っ!?」

 考えに浸っているとマントに覆われたワイズマンがジェイドの顔を覗き込んできた。

 ジェイドは驚いて、少し身を引いてから立ち上がった。

「何の用なの?」
「これはこれは。えらく嫌われたもので…」

 そう言いながら、ワイズマンは嫌な笑い声を上げる。

 ジェイドは視線を緩めずワイズマンを睨みつける。

 隙を見せないように。

「やっと…、やっと、見つけた」
「なんのこと?」

 ワイズマンは楽し気な声音で話し始める。

「そなたの<未来予知>の力を、我は欲しているのだ」
「<未来予知>…?<夢見>の力のこと?」

 魔導士と名乗るこの人物が、なぜこの力が欲しいのだろうか。

 ジェイドは怪訝に思う。

「そなたのような持つ力をずっと探し続けていた。やっと見つけたというのに、あの城から逃げ延びてしまうとは思わなんだ」
「あの城…?」

 ワイズマンが上機嫌で笑う。

 ジェイドを不安が襲う。

 ずっと心の中で蟠りつつ、仕舞っていたもの。

「夢見城を襲ったのはこの私だ」
「なんですって!?」

 ジェイドは目を見開いて驚いた。

 そして思い出す。

 あの時の恐怖。

 そして、ずっと付き添ってくれていた付き人のこと。

「あの城は崩壊し、そこにいた者も全て亡くなった」
「っ!!」

 改めて事実を知らされたジェイドは衝撃を受けた。

 やはり、無事ではなかったかと悲しみが込み上がってくる。
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