皇翠〜kousui〜
□act.1
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「ルベウス様、これが十番街なのですか?」
一人の女性が男性、【ルベウス】に尋ねる。
「うん、思った通り。まだまだ未発達な街のようだ」
ルベウスは逆立った赤い短髪と浅黒い肌で、素肌の上に緑の皮のチョッキと緑色のパンツを履いている。
ルベウスに尋ねていた女性は紫色のウェーブかかった長髪で頭頂の髪は猫耳のように隆起していて、紫色の六角形の額飾りをつけていて、ちょうど腰部分がチュチュのようになっている全身にボーダーラインの入っている服を着ている。
その場には他に3人の女性がいる。
一同が、姿見のようなガラスに映し出されている東京の街並みを見下ろしている。
「一刻も早く銀水晶を探し出し、叩き壊しましょう!」
「まー、そう慌てるな、コーアン」
先ほどルベウスに質問していた紫色のウェーブかかった長髪の女性、【コーアン】が奮い立つのをルベウスは冷静に抑える。
「そう。先にRabbitを見つけ、殺して差し上げるという案もありますわ」
薄い水色の髪を細く三つ編みし額に巻き、後ろでも三つ編みにして束ね、水色のレオタードを着た女性がおっとりした口調で提案する。
「そうだな。よし!まずはRabbitを見つけ、抹殺するとしよう」
「なんだか、物騒なお話をされてるのですね」
「っ!?」
ルベウスが意気込んだ時、東京の街並みが映し出されている姿見の中から、新たに少女が現れた。
「ジェイド!」
深緑の髪を頭の後ろに団子にして、肩周りに黒いファーのついた服を着ている女性は少女が来たことに驚いていた。
現れた少女、【ジェイド】は翡翠色の髪を肩の高さで二股に分けて、肩を出した蒼のドレスに身を包んでいる。
袖は透けていて少女の細身がよく分かる。
「ペッツ、表情が怖くなってるよ」
「・・・・」
ジェイドはにっこりと深緑の髪の女性、【ベッツ】に微笑みかけた。
ペッツは表情を改めたが、心配そうにジェイドを見つめ返す。
「何しに来ましたの?」
「20世紀の地球がどんなところか見てみたくなったのよ、ベルチェ」
先ほどの水色の髪の三つ編みの女性、【ベルチェ】は、顎に人差し指を当てながら、ガラスに映る東京の街を見ているジェイドの様子を窺った。
「物騒なお話って…あなたって本当に平和主義ね」
東京の街を覗いているジェイドの背後から肩に手を置いて顔を覗かせながら、長い茶髪をオールバックのお団子にまとめて金色のリボンをつけている女性、【カラベラス】がからかう。
「カラベラスったら…、いつの世も平和が一番よ…」
ジェイドは至極真面目に答えたのでカラベラスは目を大きく開かせながら、ジェイドから身体を離した。
「夢見姫にはこの場は似合わないかと思われますが?」
「・・・・」
ルベウスがジェイドに嫌味を言ったのと同時に映し出されていた東京の街並みが消えて、ただの鏡となる。
映像が消えてもそのまま鏡を見つめていたジェイドは真後ろにルベウスが立っていることに気づいて肩がビクっと跳ね上がり、身体の動きを固める。
ルベウスはジェイドのそんな様子を気にも掛けずに肩に手を置くと耳元まで顔を近づけて囁いた。
「早く、プリンスの元にお戻りになられては?」
ジェイドは目を固く閉じて顔を伏せた。
「放っといてください!離してっ!」
そう言って立ち上がり、ルベウスの手を振りほどくとペッツの元へと駆けて行く。
「おやおや、夢見姫さまはご機嫌斜めのようですね。申し訳ありませんでした」
「・・・・」
“姫さま”と敬って呼び掛けているのとは反対に余裕の態度を見せるルベウスにジェイドはペッツの後ろに隠れながら睨み見る。
やはり余裕を見せるルベウスは一つ鼻で笑うとペッツたちあやかしの4姉妹に計画を遂行するように指示をして、鏡の中へと去って行った。