昏い銀花に染められて…
□the present 9.
2ページ/4ページ
放課後になり、うさぎの言うとおり教室で待っていると、亜美、まこと、美奈子、星野、大気、夜天と大勢で迎えに来られ、かぐやは驚いた。
教室にはうさぎだけが来るのだと思っていたからだ。
教室にいる生徒も、周辺にいた生徒も少し驚いた雰囲気が漂ったようにも感じられた。
相変わらずの人数の多さに、頭痛が起こりそうになった。
クラウンに着くなり、もう一人、他学校のレイも落ち合うことになり、喫茶店の一角を占領していた。
「………………はぁ…」
「そんな態度とるなら、来なくていいのに」
「まこちゃんっ!!」
「………………」
まことは、依然、かぐやをよく思っていないようで、亜美がまことを諫めるが、ピリピリしたオーラが窺える。
その隣では、何を思っているのか分からないレイが、じっとかぐやを見つめている。
とても窮屈だ。
ため息も出したくなる。
まことたちの様子を見ながら、うさぎは少し焦っていた。
かぐやは、初対面から自分たちを邪険にし、あまりいい態度を見せていなかったが、それでも何度か話していれば、芯は優しい、明るい子なのだと分かる。
うさぎは皆に、そんなかぐやともっと仲良くなってほしいと思っているのだが、なかなかうまくは運ばないものだ。
レイもなんだか、鋭い視線でかぐやを見ている。
人見知りしないレイにしては、稀な反応だった。
気になったうさぎは、かぐやと初めて対面した後に、かぐやに対する鋭い視線はどうしてかと、レイに聞いてみると、「影が見える」と一言、そう言ったのだ。
うさぎも、確かにかぐやが人を寄せ付けない暗い影があるなと感じることもある。
だが、それにしてもレイの態度は露骨だなと思う。
「そ、それより、最近、彼、やって来ないよね」
「っ!?」
「…………」
まことのピリピリした態度と、レイの隙のない雰囲気に、窮屈な思いをしていたかぐやは急に掛けられた言葉に、さらに最悪な気分になった。
かぐやの隣では、うさぎがドギマギしている。
安土の話題を出してきたのは、美奈子だった。
「だから?」
「あ、うん……どうしたのかな…って」
かぐやのイライラした声音に、美奈子は少したじろいだ。
「知らない」
あっさりと答えられ、美奈子はそれ以上、会話を広げることはできなかった。
うさぎたちは、安土がランカウラスに襲われ、大量のエナジーが吸い取られたことを星野から聞いて知っている。
彼の家が分からないので、公園に放置してしまったのだが、あれだけのエナジーを吸われていては、しばらくまともに歩くこともできないだろうと考えていた。
「不思議とか思わないのかい?」
まことが苛立った声音でかぐやに尋ねた。
「全然」
かぐやは平然としている。
安土がランカウラスに襲われているところを見たということも星野たちから聞いていたが、かぐやから、怖いという感情が全く窺えずにいる。
今まで色んな妖魔が一般人と遭遇したところを見て来たが、皆、驚き、動揺し、怖がっている様子があった。
レイは平然としているかぐやの様子からも、考えるところがあるようだ。
「私、帰る」
「え?」
大勢であるということからも落ち着かないかぐやは、遂には機嫌を損ねて、帰ることにした。
うさぎは驚いたが、マフラーを首に巻いて、コートを着、鞄を肩に掛けて、帰る準備を終えてしまったかぐやを見て、止める言葉を掛けることが躊躇われた。
かぐやが大勢で関わることを苦手としていることが分かっているくせに、わざと声を掛けたのだ。
これ以上の無理強いはできないと、そう思ったのだ。
そして、自分の分の会計を済まして、かぐやはクラウンを出て行った。
「じゃ、ボクも帰るよ」
「え?夜天くん、帰るの?」
美奈子が驚いた声をあげる。
いつもの明るい雰囲気ではなく、本当に驚いたようだ。
「うん。もう3日経ってるんだよ。もしかしたら、アイツ、回復しているかも」
「朋野さんを追いかけるの?」
亜美が冷静に夜天に尋ねた。
「あぁ。かぐやはボクが守る」
そう言うと、夜天も自分の会計を済ませてクラウンを出て行った。
「…………」
美奈子は、俯いて黙っていた。
うさぎは、かぐやや夜天のことが気になり、窓からかぐやが去って行く外の様子を見つめていた。
「あっ!!」
「どうしたの?」
じぃっと窓の外を見つめていたかと思うと、急にうさぎが声を上げた。
亜美はうさぎの一声が気になり、一緒に窓の外を見た。
「あれは!!」
亜美も驚いた声を上げたので、他の皆も一緒に外を見た。