昏い銀花に染められて…

□the present 7.
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「あ、かぐやだ」
「〜〜〜〜」

 最近、ちょっとしたことで、いつもこの声がする。

 振り向かなくても声で分かってしまう。

「何?」
「そこまで嫌がらなくても……」
「…………」

 声の主が心底がっかりしているのが分かったので、かぐやは少し気の毒に思い、振り返って彼の顔を見た。

「……………何よ」

 不承不承に彼に聞いた。

 目の前には、振り向いてくれたことを喜んでいるのか、夜天が笑顔でかぐやを見つめている。

「いや、たまたま見かけたから、声を掛けてみた」
「あっそ」

 夜天は、またクスっと笑った。

(キンモク星で会った時とは逆の態度だな)

 あの時は、夜天=ヒーラーの方が、嫌な態度を取っていた。

 だが今は、かぐやの方が、面倒そうな態度を見せている。

 夜天は、それを勝手に面白がっていた。

「なんなのよ、一体……」

 かぐやは変な人と思って、夜天に呟いた。

「なぁ」
「?」

 夜天の後ろから、ひょこっと顔を覗かせて、星野がかぐやに声を掛けて来た。

「今朝いたあの男、なんなんだ?」
「〜〜〜」

 星野のその言葉で、かぐやは少しの間忘れていた、厄介の人物の存在を思い出した。

 とても迷惑そうな表情を見せたので、夜天たちは顔を見合わせた。

「朋野さん?」

 大気が気にかけて、かぐやを呼びかける。

 かぐやは悩ます頭を抱えながら、3人に答えた。

「彼はただの幼馴染よ」
「ただの?」

 夜天ではなく星野が突っ込んで聞いて来た。

「ええ」

 かぐやはつっけんどんに、突き放して返した。

「でも、なんか付きまとってきてる感じが見えるんだけど?」

 やっぱり夜天も追究してきた。

「ボディーガードしようか?」

 かぐやは彼のその意外な発言に驚いて、聞き間違いではないかと訝しむような表情を見せた。

「何だよ?」
「結構です」
「え?」

 驚いた割りにはあっさりと返されてしまい、夜天は自分の耳を疑いかけた。

「じゃぁ、帰るわ。さようなら」

 あっさりしたまま、かぐやは夜天たちに背を向けて、帰って行ってしまった。

「ボディーガードって、なんだか懐かしいですね」

 大気がクスクスと笑いながら、夜天に言った。

「ちょっと、星野が月野のところに行ったときと一緒にしないでくれる?」

 夜天は大気の言いたいことが分かって、拗ねた口調で言う。

「おい待てよ!それはどういうことだよ」

 星野も慌てて加わる。

「下心はないってことだよ」
「っな!!」
「落ち着いてください」

 夜天の嫌味を聞いて、彼に掴みかかりそうになる星野を大気は押さえた。

 その2人を尻目に夜天は、かぐやの去って行った方を見つめていた。

 彼女のさっきの瞳が気になるのだ。

 いや、さっきだけではない。

 再び出会った日からだ。

(やはり、昏い瞳をしていた……)

 夜天はその目を何とかしたいと思っていた。



あの綺麗に咲く、
銀の花を取り戻したい――…






the present 8.
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