昏い銀花に染められて…

□the present 4.
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(誰……?)

 うさぎは夢を見ていた。

 真っ暗な視界の中、少女の泣き声が聞こえている。

(どうしたの?)

 うさぎは夢の中で、キョロキョロと周囲を見渡した。

(!!)

 そして、2人の少女の姿を見つけた。

 その一人は自分の前世の姿――P・セレニティだったのでうさぎは驚いていた。

 前世の自分は、橙色のドレスを身に纏った少女に寄り添っていた。

 橙色のドレスを身に纏った少女は、漆黒の長髪を右側に束ねて、顔を俯かせていた。

 肩が震えているので、泣いているのはこの少女の方だろう。

『おじさまと、おばさまは本当に残念だったわ……、落ち着いて―――』

 セレニティがもう一人の少女の背中を摩りながら、声を掛けている。

 最後に、少女の名前を発したようだったが、うさぎは聞き取ることができなかった。

(誰なの……?)

 うさぎは前世の自分に疑問をぶつけた。

(!!)

 その時、前世の自分と視線がぶつかったような気がした。

 セレニティの瞳は、真剣で、何かを自分に託しているような感じを覚えた。




「っ!!」

 うさぎは、ガバっと体を起こした。

 目の前には、まことと美奈子の姿があった。

「また、夜遅くまでゲームでもしてたの?」

 美奈子が笑いながらうさぎに尋ねる。

「気が付いたら、HRで寝てるんだもんな」

 起こそうと近づいたらしい、まことも笑っていた。

 ちょうどその時、教室の扉が開かれる音がした。

「うさぎちゃんっ!!美奈子ちゃん、まこちゃん、ちょっと」

 亜美がやって来て、うさぎたちを呼んだ。

 どこか慌てた風だったので、うさぎたちはすぐに亜美の元へと向かった。

「げっ……」

 亜美に連れられて来たところは、先日行われた実力テストの結果が張り出されている廊下だった。

 うさぎは、自分の成績の低さに、苦い声を発した。

 亜美はこれを見せたかったのかと思い、うさぎは視線を送ると、亜美は指を差して、そちらを見るように促した。

「「「!!!」」」

 亜美の指を差した方を見た、うさぎたちは目を丸くして驚いた。

「げ、1位が亜美ちゃん含めて3人もいる……」

 うさぎが驚愕の声を漏らす。

 常に成績優秀な亜美は見慣れている。

 もう一人は大気だ。

 結果の貼り出しを星野たちも見に来ていた。

 うさぎたちは、その大気に視線を向けて、相変わらずだなという感想を持った。

 そして、最後の一人は、「朋野かぐや」だった。

「「「えっ!?」」」

 改めて名前を見たうさぎたちは、また驚愕の声を上げる。

「“かぐや”って……まさか……」

 うさぎが呟く。

 うさぎの隣にいる美奈子は、自然と夜天の方を見た。
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