昏い銀花に染められて…
□the present 3.
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かぐやは続けて言葉を紡ごうとしていたのだが、“にゃぁ”というガーネットの声に阻まれた。
「なぁに?ガーネット!!」
そう言って、かぐやはガーネットを見下ろすと、何か抗議の目を向けられていたので、話を打ち切って、帰ることにした。
「すみません。私、買い物があるので」
そう言いながら会釈をして、かぐやは公園を出ようと走り始めた。
「ちょっと、待って!!」
「はい?」
衛に呼びかけられて、かぐやは急ブレーキをして立ち止まった。
「名前を聞いてもいいかな?」
衛の方に振り向いたかぐやはそう聞かれて、彼に満面の笑顔を見せた。
「はい。私、朋野かぐやって言います」
その元気な笑顔を見て、衛は年相応だなと安心して、自分の名も名乗った。
「俺は、地場衛。またな」
「はい」
そうして、かぐやは走り去って行った。
(やはり、影がつきまとっている感じがするな)
衛は立ち去って行ったかぐやの方を見つめたまま、真剣な表情見せていた。
(それに――…)
彼女の名前が、夜天の探しているプリンセスと同じ名前ということにも気になる。
「ん?」
考え事をして、下を見ていた衛は、その地面に落ちている小さな巾着袋を見つけて、拾った。
その巾着からは、金木犀の香りが仄かに香っている。
「これ、もしかして――…」
そう呟くと、またかぐやが走り去って行った方を見つめた。
「もぉ!!なんなのよっ!ガーネットったら!」
公園を出てから、かぐやは顔をふくらませて、グチグチ文句を言っている。
「あのね、まだエンディミオンの生まれ変わりだと決まったわけじゃないのよ」
「あら?あの人だって分かったんだ」
まだ、ガーネットには先ほどの彼が、エンディミオンの生まれ変わりかもしれないと思っているということを言っていなかった。
「アンタの態度とか、あの人の見てくれ見てたらだいたい見当つくわよ……」
トコトコと歩きながら、ガーネットは下を向いてため息をついた。
「だから!まだ生まれ変わりだと、決まったわけではないから、あまり簡単に身の上を話さないこと!!」
「はぁ〜い」
「〜〜〜」
分かったのか、分かっていないのか、小学生のような明るい返事をされて、ガーネットは調子が狂ってしまった。
だが、また見上げて見たかぐやの瞳は、真剣で何かを狙っているような、昏いものだった。
分かってる。
自分が何をしなければいけないのか……。
自分が幸せになれないまま死んだのは
セレニティがいたから。
前世の運命は現世でも変わらず
自分に降って来ている。
全て、セレニティのせい――…
だから、復讐するんだ。
そして、あわよくば、
エンディミオンの生まれ変わりと……
「あなたたちは幸せにならなくちゃ……」
⇒the present 4.