昏い銀花に染められて…

□the present 2.
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「月の王国、シルバー・ミレニアムが栄えていた時代のことよ……」

 銀色の妖魔が浄化され、皆が変身を解くと、ルナの周りに集まり、話を聞いた。

「まだ、Q・セレニティがクイーンの座についたばかりの時の話」

 “ヴェーランス”という名の魔女がいて、それが月の裏側に棲みついた。

 憎しみの魔女とも呼ばれる彼女は、人々の憎しみを増長させて争いを起こすことを好んでいた。

 ついにその魔の手が月の王国にも伸びてきた。

 黒魔術を使い、月の王国の者たちの憎しみを増長させて、国の混乱を謀った。

 それに気づいたQ・セレニティは、根源を探し、月のシルバー・ミレニアムの反対、裏にあたるところへ自ら向かった。

「そして、その地に咲いていたのは、月にもない花弁が銀色をした花だったの」

 ルナの横に座っている夜天は目を大きく開いて反応した。


―――銀色の花……銀花……


(フっ、まさかね)

 思うことはあったようだが、その目を伏せて頭の中で打ち消した。

「その花は魔女ヴェーランスが所有する花で、その名を“ランカウラス”と言ったわ」

 Q・セレニティはその花を見た瞬間に、人々のエナジーを吸い取るモノだと気付き、銀水晶の力を放って、全てを浄化した。

 そして、ランカウラスの花が浄化されたことに気付いた、魔女ヴェーランスは表舞台に出てきた。

 Q・セレニティは、その禍々しさに一瞬臆したものの、すぐに銀水晶の力を使って、その地に封印した。

「クイーン、お一人の力ではヴェーランスの大きな力には敵わず、どうにか封印することはできたという次第よ」

 ルナは話を終えた。

(シルバー・ミレニアムの裏側……?)

 ルナの話が終わったと同時に夜天はふと、話の最初を思い出した。

(シルバー・ミレニアムの裏側って、カグヤの祖国のシルバー・キングダムがあったんじゃなかったっけ?)

 夜天は同志である星野と大気に目線を向けた。

 2人もそれに気づいているようだった。

「ヴェーランスが所有する花が現れているってことは、そのQ・セレニティが封印したはずのヴェーランスが封印を解いてこの地球にやって来たってこと?」

 レイがルナに尋ねる。

「………」
「ルナ?」

 レイの問いを聞いたルナは何かが気になった。

(封印……ヴェーランスが封印を解いた?)

 ルナは考え込んでいた。

「ねぇ、ルナ。その“らんかうらす”って花は、エナジーを吸い取るんでしょう?」
「えぇ」

 う〜んと考えていたうさぎが、何か引っかかりを覚えていたルナに尋ねた。

「でも、スターシードが現れていたの、ルナも見たよね?」
「えぇ…」

 うさぎの疑問が分かったルナは、昨日のことを思い出して、考え込んだ。

「エナジーを取るはずの花が、スターシードを集めているっていうのは、気になるわね」

 亜美もうさぎの言葉を受けて考え込む。

「敵の正体も狙いもまだはっきりと分からないから、どうしようもないな」

 まことが呟く。

 ヴェーランスが復活してようと、していまいと、ルナは皆に用心するように促す。

「で、そいつらはどうしているんだ?」

 ずっと黙ってルナたちの話を聞いていたはるかが口を開いた。

 そのターゲットは星野たちだ。

 星野たちははるかのその苦い口調に、気分を悪くする。

「お前に関係ないだろう」

 最近、常に不機嫌の夜天が逸早く答える。

「なんだとっ!?」

 まだ溝があるのか、はるかもその夜天に突っかかる。

 それをみちるが抑える。

 うさぎたちが、星野たちの前に出て説明し始める。




「なんだって!?」

 うさぎたちから星野たちがどうして戻ってきたのか、説明を受けたはるか、みちる、せつなとほたるは驚きの表情をしていた。

 はるかたちにもそんな、前世の記憶はないのだ。

「シルバー・ミレニアムのことははっきりと覚えている……」
「だけど、もう一人のプリンセスがいたことまでは知らないわ……」

 はるかとみちるが息を呑みながら答える。

「ほらね」

 また夜天が嫌味な口調で言う。

「コイツらに言ったところで、頼りにならないんだよ」

 そう言うと、夜天は去って行った。

 その彼に、星野と大気も黙ってついて行く。

 はるかたちは、自分たちの記憶が本物ではないことに驚愕し、黙って彼らが去るのを見つめていることしかできなかった。
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