昏い銀花に染められて…

□the present 2.
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「せつなママ、帰りに遊んで帰ってもいい?」
「はい………ほたる……」
「なぁに?」
「急ぎましょう……」

 ほぼ全員が火川神社に集まっている頃、せつなとほたるはまだ、十番公園にいた。

 ほたるが、要所要所で立ち止まっては、草花を見たり、犬と戯れたりと、モタモタしていたのだ。

 せつなは飽き飽きしており、一刻も早く火川神社へと向かいたいという気持ちが、いつも冷静なせつなを苛立たせていた。

「わぁ!!」
「今度はなんですか!?」

 やっと十番公園まで来て、順調に歩を進み始めたなと思った矢先、また楽しげな、嬉しげな声を上げる。

「見たこともない花があるよ」

 そう、せつなに言った。

 せつなはほたるに歩み寄って行き、彼女の言う見たこともない花というのを見た。

「っ!!本当ですね……これは何という花なんでしょう?」
「ねぇ、持って行って、みんなに見せようよ」

 ほたるは無邪気な笑顔をせつなに見せる。

 だが、せつなはその花を訝しんでいた。

「そうですね、持っていきましょう」

 地球外の植物という可能性もある。

 火川神社に行けば、ルナや亜美もいるから相談できるだろうと思い、ほたるの言葉を受け入れ、それを持って、神社の方へ向かって行った。




「お待たせしました」
「あ、来た来た!ほたるちゃんとせつなさん!!」

 階段を上がりきる前に、せつなが言葉を掛けた。

 その声を聞いて、うさぎが反応する。

 そして、背の低いほたるの姿が視認できると、皆が話を始める雰囲気に変わる。

「っ!!」
「どうしたの?ルナ?」

 一旦階下に降りて、また戻ってきた夜天の膝の上で落ち着いていたルナが、ほたるの姿を見た瞬間に立ち上がった。

「ほたるちゃん!!ソレを捨ててっ!!」
「え?」

 ルナが急に大きな声を上げたので、ほたるは驚いていた。

 ほたるの手には、見たこともない綺麗に開く花があった。

 ルナはソレを捨てるように吠えたのだ。

 だが、その瞬間に、その花が光を放ち始めた。

「な、何!?」

 驚き困惑するほたるは花を乗せている手を頭上に上げることしかできなかった。

 そのほたるを見兼ねて、はるかが瞬時にほたるに近寄り、彼女の手の中で光輝く怪しい花を振り払った。

「………」

 はるかの腕に包まれるほたるは、声が発せないほどの驚きと恐怖を感じていた。

 そして、地面に落とされた怪しい花は、みるみるうちに人の姿に成った。

「あれは!!」

 うさぎが声を上げる。

 人の姿になったソレは、全身銀色だったのだ。

 そう、昨日見た、正体不明の銀色の妖魔だった。

「皆っ!変身よっ!!」

 美奈子が皆に声を掛ける。

 その言葉を受けて、それぞれの変身アイテムを取り出し、スペルを唱える。

 各々が光輝き、セーラー戦士へとチェンジして行く。

「綺麗な花には毒があると言えど、妖魔になって小さな子どもを襲おうとするなんて、このセーラームーンと……」
「私たち、セーラーチームが!!」
「「「「「月に代わって、おしおきよ☆」」」」」

 セーラームーンを筆頭に、変身した皆が並んで現れる。

『………』

 相変わらず声も発さないその銀色の妖魔は、ニヤっと笑ってセーラームーンたちを見つめている。

 すると、両手を前に突き出した。

「な、なに?」

 セーラームーンが、静かなその動きに疑問の声を上げる。

 その瞬間、銀色の妖魔の両手から、鋭利に尖った銀色の塊がたくさん現れて、それを放った。

「わっ!!」

 セーラームーンは声を上げて、後方に飛んで回避する。

 他の戦士も自分の方に向けられて放たれたその塊を避けて行く。

「昨日と違うっ」

 セーラームーンは急な攻撃であったことと、昨日の者とは違った攻撃に驚いて言う。

 そうしている間にまた鋭利に尖った銀色の塊を現して戦士たちに放つ。

 もちろん戦士たちは回避していくのだが、神社の石畳などが破壊されていっているのは言うまでもなく……。

「あぁ〜ん!うちの神社が破壊されちゃうじゃないっ!!」

 とマーズが嘆きの声を放つ。

 だが、銀色の妖魔にマーズの都合など理解できるわけもなく、第三派が放たれる。

「くっ!近づく隙も与えないってことか!?」

 ジュピターが苦い声を上げる。

「………」

 その後ろでは、黙ったままのヒーラーがいた。

 そして、ため息をつくと、間髪入れずに第四派を放とうとする銀色の妖魔の方を見て、スターエールを取り出した。

「また来るわっ!」

 マーキュリーが冷静にみんなに声を掛ける。

『スター・センシティブ・インフェルノ!』

 ヒーラーが攻撃を仕掛けた。

 一同、一瞬のその判断に驚いて見ていた。

 そして、放たれた第四派もろとも破壊しながら、銀色の妖魔を攻撃する。

 その攻撃に当たった銀色の妖魔は何の声も発さずに後方に倒れる。

「今よ、セーラームーン!!」

 ヒーラーがセーラームーンに声を掛ける。

「あ、はい!!」

 そうして、エターナル・ティアルを現したセーラームーンは銀色の妖魔を浄化した。
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