昏い銀花に染められて…
□the present 2.
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「まぁ〜もぉ〜ちゃ〜〜ん!!それはどういうことっ!!!!」
「いや…だから、ぶつかっただけだって」
衛と共に、火川神社の階段を上がって来た、はるかとみちるは、うさぎの姿を見た瞬間に衛が下で綺麗な少女と出会っていたことを話した。
しかも、結構近距離だったということを、詳しい説明を省いて言った。
うさぎにヤキモチを妬かれて、タジタジしている衛の姿を見て、みちるはクスクスと笑っていた。
その横ではるかはある3人の姿を視認して、険しい顔をしていて声を発した。
「どうして、お前らがここにいるんだ?」
苦い声で言い放ったはるかの横でみちるはしょうがないわねと呆れたため息を漏らしていた。
ルナを膝に乗せて撫でていた夜天が、そのはるかの言葉に一番反応して、突っかかった。
「別に、お前には関係ないだろう」
「なんだと!?」
一瞬にして険悪な雰囲気が漂う。
周囲は一気に静まり返ったのだが、そんな状況に気付いていないうさぎは続けて衛を問いただしていた。
「どんな子!?どんな子だったの!まもちゃん!!」
「うさ子、落ち着けって!!」
「まもちゃんが綺麗って言った、その子はどんな子だったの!!」
「黒い長い髪の大人っぽい子だよ」
衛のその言葉からは、どこにでもいそうな感じがする。
「あ、そういえば、金木犀の香りがしたような……」
ふと、尻もちをつく少女を支えた時に、鼻に香って来た香りを思い出して言った。
「なんだって!?」
その言葉を聞いて、夜天はバっと立ち上がった。
はるかを筆頭に、周囲も驚いた表情を見せる。
立ち上がったかと思うと、そのまま階段の方に向かって、神社を降りて行った。
「一体、何なんだ?」
まだ全貌が掴めていない、はるかは夜天の急な行動に疑問符を浮かばせていた。
「私も行ってくる」
「え!?」
「美奈子ちゃん!?」
少しして、急に美奈子も立ち上がって夜天の後を追って行った。
はるかは目を丸くしていた。
「ほたるちゃんと、せつなさんが来たら、全部話しますから……」
亜美は、はるかとみちるにそう言って、一旦落ち着いてもらうことにした。
「そういえば、ほたるちゃんと、せつなさんは?」
夜天の大声に一瞬で冷静に戻ったうさぎは、まだ来ない2人のことをはるかに尋ねた。
「あぁ、多分、ほたるがトロトロしてるんだと思うよ」
はるかがクスっと笑って言う。
「もうすぐしたら来ると思うわ」
みちるがはるかの後付をする。
うさぎたちは自分たちより少し年上のこの2人の大人っぽさに、ホウッとなっていた。
(カグヤだ!!)
衛が言った、“長い黒髪”そして、“金木犀の香り”。
もしかしたら、本当によくいる少女かもしれない。
だけど、カグヤと思わせる――思ってしまう。
階段の終わりが見えると、夜天は2段ほど飛ばして下り、周囲を見渡した。
(…………もう、いるわけないか……)
息を荒くしている夜天は、最後に落胆の息を吐いた。
「夜天く〜〜ん!!」
その時、背後から高い少女の声が降って来た。
またか。と思いながらそちらの方を振り向く。
「いた!?」
階段を降り切った美奈子が、夜天に聞く。
「見て、分かるだろう」
依然、邪見に扱われることに美奈子は少し悲しみを感じる。
だが、負けじと返す。
「そんな言い方ってないじゃない!私たちだって、手伝いたいと思っているのに」
「覚えていないのに?」
冷淡な夜天の言葉に、カッとなる。
「忘れたくて、忘れたのではないわっ!!少しでも思い出そうとしているのに……」
「はいはい」
夜天には一つも靡いていない。
美奈子は、悔しいと思いながらも言葉が続かない。
階段を上がり始める夜天について行った。