昏い銀花に染められて…
□The present 1.
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(今のは……)
夜天は目の端に長い黒髪を靡かせて、公園に入って行く人物を見た。
しかも、その少女の傍らには珍しい紅色のネコがいたのだ。
(アレが、ガーネットだとしたら、あの人物は……!!)
夜天の気持ちが逸る。
息を切らして、少女が入って行ったと思われる十番公園で立ち止まると、周囲を見渡した。
(………)
だが、見渡しても誰もいない。
夕方なので、小さい子どももいない。
(そんな……)
絶対カグヤだと思ったのに、黒髪の少女の姿形さえも見えない。
自分の目は確かに黒髪の少女と紅色のネコを捕えたはずであるのに……。
夜天が残念がっていると、そこへ、星野と大気が追い付いて来た。
「どうしたのです?急に走り出して……」
大気も猛ダッシュで追いかけてきたようだ。
あとから来た星野とともに息を切らして夜天の様子を見つめる。
『きゃああああ!』
その時、公園の奥の方から女性の叫び声が聞こえて来た。
夜天は、先ほど見たカグヤらしき面影が忘れられず、もしかしたら、カグヤかもしれないと思い、また駆けて行った。
「何なんだよっ!!」
星野が、夜天の不可思議な行動に毒づいた。
「星野っ!!」
「ん?おだんご!?」
公園の横を通っていて、同じく叫び声を聞いたうさぎが前を行く星野に声を掛ける。
「何があったの?」
「まだ分からない」
「とりあえず、行きましょう」
うさぎ、星野、大気は慌てて叫び声のした方へと向かって行った。
叫び声のした方へいち早く駆けつけた夜天は、驚いた。
「なんだ!?」
目の前には、頭上にスターシードを現した女子高生と、その少女の前に立つ、全身が銀色の人の姿をした、妖魔のようなものがいた。
その銀色の妖魔の胸元には見たことのない花が象られていた。
「はっ!アレは!!?」
「!?ルナ?」
あとから、星野と大気たちもやって来て、うさぎと共にいたルナが銀色の妖魔を見て、叫んだ。
「とりあえず、変身だ!!」
星野がそう言うと、夜天と大気もチェンジスターを手に持つ。
うさぎは、ブローチを掴んだ。
『ファイター・スターパワー!メイクアップ!』
『ヒーラー・スターパワー!メイクアップ!』
『メイカー・スターパワー!メイクアップ!』
『ムーン・エターナル!メイクアップ!』
4人は変身した。
銀色の妖魔は、少女の頭上に現れているスターシードに手を伸ばそうとした。
だが、そのスターシードが輝きを失い、黒くなったのを見て、その手を引っ込めた。
そして、引っ込めた手の爪を鋭利に長く伸ばすと、少女に向けて構えた。
『スター・シリアス・レイザー!』
『っ!!』
銀色の妖魔は驚き、その攻撃が当たる手前で、後方へと飛んで避けた。
そして、攻撃が放たれただろう方を向いた。
「学校帰りの女子高生を襲う悪いヤツ!!あなたが何者なのか分からないけれど、悪さをするヤツはこのセーラームーンが月に代わっておしおきよ☆」
「そして、スターライツ!ステージ・オン!」
大きな羽を広げた、セーラームーンと名乗る戦士の横に、スターライツの3人が並んで現れる。
だが、銀色の妖魔は依然、黙ったままである。
「なんか言いなさいよっ!!」
拍子抜けしたセーラームーンが、声を荒げて妖魔に言う。
その下で、ルナが呆れている。
そんなことをしていると、銀色の妖魔が、鋭利に伸ばした爪を構えて、セーラームーンとスターライツの方に目掛けて来た。
「危ないっ」
「わっ!!」
思いも掛けない速さで突進してきたので、セーラームーンはファイターに助けてもらって、避けることができた。
ヒーラーとメイカーは各々で回避した。
「なんて速さなの?」
セーラームーンが驚いて、銀色の妖魔を見つめる。
「アンタがのろいだけじゃないの?」
「ヒーラー!!」
ヒーラーがセーラームーンをバカにすると、ファイターが諌める。
「今は、そんな憎まれ口をたたいている場合ではないでしょう」
メイカーにも注意を受けてしまった。
「はいはい……」
ため息交じりに、ヒーラーは返事をした。
そして、立ち上がると、スターエールを取り出して、攻撃のスペルを唱える。
銀色の妖魔は、背後に位置するセーラームーンたちの方に振り向こうとしている。
『スター・センシティブ・インフェルノ!』
振り返ろうとしていた、その時に、銀色の妖魔はヒーラーの攻撃を受けた。
ソレは後方に飛ばされて、仰向けに倒れこんだ。
「セーラームーン、今よ!!」
ファイターの掛け声とともに、セーラームーンはエターナル・ティアルを現した。
『シルバームーン!クリスタルパワー・セレピー・キッッス!!』
大きな輝きに包まれて、銀色の妖魔は浄化されて、消え去った。