昏い銀花に染められて…

□Episode 0.
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 カグヤが来てから、一ヵ月が経った。

 今まで近づこうとしなかったカグヤと関わったあの日。

 木の幹に器用に寝ていたカグヤ。


「自然が好きだから、安心できるの」



 その言葉を発した時の彼女の瞳は輝いていた。


―――きっと、これがきっかけ……


 それからは意識して見ていた。

 妖魔が侵入して来た時も、居場所が分かっていたから、すぐさま走って向かった。


―――守らなければ!!


 そんな事を思っていたような気がする。

 覚えちゃいない。


―――無我夢中だったから


 妖魔から無事助けたけれど、カグヤの様子が明らかにおかしかった。

 花畑に力なく座り込んだあの娘……。

 私に泣いて訴えた。


「私だって、
月の王国のプリンセスだったのにっ!!」





あの昏い目は彼女の全てを
物語っていたんだ……





 その一瞬で私はカグヤが愛しくなった。

 だから、彼女を抱きしめた。

 そして、心の片隅で、彼女の片想いに引っかかっていた。




 その夜。

 気になって仕方なくて、私はカグヤの部屋に赴いた。

 金木犀を初めて見たようで、とても興味を示していた彼女は可愛かった。

 そして、笑った顔は、とてもプリンセスらしかった。



「プリンセスっぽくしたら、争っているようにみえるから……」



 私はこの時にカグヤの苦しみが見えたような気がした。

 プリンセスらしからぬお転婆の姿。

 そして、瞳まで明るくなれない毎日。

 全てはシルバー・ミレニアムでの生活の窮屈さからだったのだと……。

 本人は何も、野心を抱いてはいないのに……。

 周囲はそんなことはお構いなし。

(そう言えば、プリンセスも即位される時、色々派閥争いがあったような気がする)

 だが、話していくうちにすっきりして来たのか、カグヤの目が明るく光を宿すのが分かった。


(ん?)

 私は、その目が気になった。



「はな……」
「鼻?」
「違うっ!!花よ!!」
「え?」



 カグヤの目の中に花が咲いていた。

 銀の花――…

 それはカグヤを映し出すかのように、瞳に咲く綺麗な花だった。
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