昏い銀花に染められて…

□the past 6.
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「何っ!?」

 カグヤは驚いて声を発した。

「セレニティ!セレニティはどこっ!?」
「ここよ!カグヤ!!」

 警報に驚き慌てる人々の間を縫って、セレニティがカグヤの元までやって来た。

 カグヤはセレニティの腕を持って、また周囲を見渡す。

「ヴィーナス!マーズ!マーキュリー!ジュピター!!」
「「「「ここにっ」」」」

 呼ばれた四戦士は、すぐにカグヤの元まで走ってやって来た。

 そして、立て膝を付き、顔を伏せて構える。

「何事?」
「まだ、よくは分からないのですが……」

 ヴィーナスが顔を上げて言う。

「どうやら……地球が攻めて来たようです」

 マーズが次に答える。

 カグヤはエンディミオンと目線を合わせた。

 そして、四戦士に視線を戻すと、強く言った。

「セレニティには私が付きます。あなたたちは侵入者の排除に回ってください」
「「「「はい!!」」」」

 そう言うと、四戦士は足早に城の外へと散って行った。

 カグヤはその四戦士を見送ると、セレニティの腕を掴んだまま、クルっと踵を返して言った。

「エンディミオン、あなたも来て」

 エンディミオンは剣を構えていたのだが、思わぬカグヤの声掛けに驚いた。

「あなたはいいのよ。セレニティと逃げるの」
「っ!?」

 セレニティは目を見開いて驚いた。

「だがっ!」
「いいからっ!!」
「!!」

 カグヤの言葉に、少し戸惑ったエンディミオンが抗議しようとしたが、よく響く荒いカグヤの声に負けてしまった。

「あなたたちは幸せにならなくちゃ……」

 眉を垂らして、カグヤは2人に言った。

「さ、早く!!」

 カグヤが先頭に立って、ムーン・キャッスルの奥まで入って行く。

 普段誰も入り込まないところまで来た。

「カグヤ、ここは?」
「Q・セレニティに教えてもらった秘密の通路」

 セレニティの方に振り向いて、ウインクをしながら答える。

 そして、行き止まりにたどり着く。

 そこの床の一つを鳴らすと、重たくない、軽い音が聞こえた。

 その床を持ち上げると、空洞になっており、狭い、真っ暗な通路があった。

「シルバー・ミレニアムは太古の昔からあるお城。クイーンやプリンセスを守るために、秘密の通路の一つや二つ、あるってわけよ」

 そう言うと、カグヤは二人に行くように促す。

「あなたはどうするの?」

 自分たちを先に促すカグヤをセレニティは案じた。

「私は残るわ」
「ダメよ!!ダメ!!」
「っ!?」

 そう言って、セレニティがカグヤの腕を掴む。

「あなたも一緒に行くのよ!」

 セレニティの目に涙が溜まっている。

 カグヤは心優しい彼女に、暖かい笑顔を向けた。

「私はいいのよ。あなたたちが幸せに生き残ってくれたら」
「いやっ!!」
『見つけたぞっ!!』
「「「っ!?」」」

 カグヤも一緒に行くように訴えるセレニティに難儀していると、3人の背後に禍々しい気を放った女性が不気味な声を掛けてきた。

「Q・ベリル!!」

 エンディミオンがその女性の名前を言いながら、剣を構える。

 Q・ベリルはダーク・キングダムという勢力の女王の位置に立つ者。

 そして、秘かにエンディミオンに想いを寄せる者の一人であった。

『エンディミオン……また月に来ていたのか』

 女性なのに、低いその不気味な声に、セレニティは震えている。

 カグヤはその彼女を抱きしめる。

『そんな小さな月のプリンセスのどこがいいのかっ』

 Q・ベリルは苦い表情をカグヤたちに向ける。

 その時、Q・ベリルのさらに背後からチリンチリンと鈴の音が響いて聞こえた。

 その音に聞き覚えのあるカグヤはハっとして、叫んだ。

「ガーネット!!来ちゃダメっ!!!!」

 ガーネットはカグヤたちがQ・ベリルと対峙しているのを見て、こちらに走って向かってくる。

 大きさの違いは分かっているはずなのに、Q・ベリルに突進しているのだ。

『ふんっ。小賢しい』

 そう言って、Q・ベリルは飛びかかって来たガーネットを、その自ら長く伸ばした強固な爪で引き裂いたのだ。

 ガーネットは血を流して、地面に倒れた。
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