昏い銀花に染められて…
□the present 12.
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かぐやに誘われて、碧の家に赴いた後、夜天はとても幸せな気持ちで帰宅して来た。
「おかえりなさい」
「どうだった?」
家に帰ると、大気と星野が迎えてくれた。
「あぁ、楽しかったよ」
だけど、と夜天は続けてランカウラスが碧を襲ってきて、かぐやが気絶している間に変身し、散らしたことを話した。
「朋野さんは、大丈夫だったのですか」
「大丈夫だったよ」
大気が気になって夜天に尋ねた。
夜天は笑顔であっさりと答える。
「様子は?」
「様子?」
以前、安土がランカウラスに襲われているところを目撃しても、驚きも動揺もしなかったことが、大気は気になっているのだ。
夜天は大気が何を気になっているのかが分からなかった。
「………」
「夜天?」
ふと、黙りこんだ夜天は思い出したことがあった。
「碧さんっ!それに触っちゃだめ!!]
大気の方を真っ直ぐに見ると夜天は言った。
「ランカウラスの花を見たとたん、かぐやの様子が変わったような……」
ランカウラスが花から人の姿に成っても動じることなく、碧に逃げるように声を荒げて言っていた。
そして、碧が襲われると、逃げることもなく、むしろ助けようとしていた。
「そうですか」
夜天からかぐやの様子を聞いて、大気は思うことがあった。
「なんだよ」
そんな大気の様子を見て、夜天は訝しげに尋ねた。
「いえ……」
手を上げて、何でもないと誤魔化すと、大気はその場から去って部屋に入ろうとした。
だが、夜天は彼のその態度に腹が立ち、背の高い彼の肩を力強く掴むと自分の方に振り向かせた。
「おい、大気。ボクを誤魔化せると思うの?」
夜天の鋭い視線を受けて、大気は息を漏らした。
そして、改めて夜天に視線を移すと、自分の考えを言った。
「朋野さんは何かを知っていると思います」
夜天は黙ったまま、大気の言葉を聞いている。
「以前も、そして今回も、あまりに平然としすぎています」
怪しむ理由は十分にある。
ランカウラスに何か関係があると思ってもいいのではないだろうか。
「それでも……」
夜天は渋面を見せた。
改めて大気に言われたが、自分でも不思議に思っていたことだ。
「ガーネット!!いるのっ!?
やめさせて!!止めてよ!!」
あの場にいるはずもない紅色のネコ、ガーネットの名前を荒く叫んで呼んでいた。
分かっていたことではある。