昏い銀花に染められて…
□the present 11.
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どうしたことだろう。
最近、自分はかぐやと夜天のことばかり見てしまっている。――無意識に。
さらに、先日、かぐやが夜天を何やら誘っている場面を目撃してしまった。
珍しくかぐやが、自分たちのクラスに来ているというので、すごく印象に残ってしまっている。
それが余計に気にさせているようだ。
かぐやは夜天を何に誘ったのだろうか。
また、2人はどのように過ごしたのだろうか。
気になる。
とても気になる。
「おいっ!美奈っ!!」
「ん〜〜〜〜〜」
美奈子は暖かい布団の中で、唸っていた。
あと10分。
いや、1分でもいいから寝かして欲しい。
昨夜は、考え事をしていて、なかなか寝付けなかった。
ただでさえ遅刻の常習犯だというのに、寝付けなかったのなら尚更危ない。
美奈子のパートナーでもある、額に三日月ハゲのある白いネコのアルテミスは、厚い布団に負けないように、美奈子を大きく揺らして、声を張り上げ、彼女の目覚めを促していた。
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
美奈子は厚い毛布にさらに包まる。
そのやり取りをしていると、カチっと針が一つ分を刻んだとともに、けたたましい音が部屋中に鳴り響いた。
「っ!!」
「わーーー!!」
その音を聞くやいなや、美奈子は大きな目をパチリと開けると、布団にアルテミスが乗っているということも忘れ、勢いよく起き上がった。
アルテミスは床に落とされてしまった。
目覚まし時計がけたたましく鳴り響く中、美奈子は慌てて制服に着替えて、頭に赤いリボンを結んだ。
「遅刻、遅刻、遅刻しちゃうぅ!!」
そう叫びながら、朝の支度を順番に終えて行く。
「だから、起きろって言ったのに……」
いつものことであるが、一つぐらい文句を言いたくなる。
いい加減、早起き出来るようになんとかしろよ。とアルテミスはため息まで漏らしてしまった。
部屋中をバタバタと駆け回り、最終的には部屋の扉を荒く締めて「行って来ます」と言って家を出て行く。
本当に毎度……である。
「はぁ…良かった…時間に間に合いそうね」
荒く家を出た美奈子は自分の足の早さを、少し自慢に思った。
彼女の足元で並走していたアルテミスは、ハハハと呆れていた。
そして、一緒に校門をくぐり、学校の中に入って行った。
遅刻ではなかったことを喜び、軽快だった美奈子の足取りが玄関に差し掛かかるにしたがって緩まってきた。
「美奈?」
アルテミスは美奈子を見上げて、名を呼び掛けた。
美奈子の目が左右に揺れて、一点を見つめている。
その視線をなぞって、アルテミスは正面を見た。
「!!」
アルテミスは美奈子が動揺している原因が分かった。