昏い銀花に染められて…

□the present 9.
1ページ/4ページ

 安土がランカウラスに襲われてから3日ほどが経っている。

 安土は現れていない。

「どれだけエナジーを吸い取ったの?」

 かぐやは、しばらく平和な日々を過ごしていた。

 今は、また授業をサボって、いつもの校庭で、ガーネットと話している。

「さぁ?私は安土の気配を追って、ランカウラスを開花させただけ」

 ガーネットはさらっと言った。

 ランカウラスを開花させるのはガーネットだ。

 だが、そのランカウラスがどれだけの力を持ち、どれだけターゲットのエナジーを吸うのかは分からない。

 そこは、開花させたランカウラスによる。――条件もあるにはあるが……。

「それにしても、さすがに力の源であるエナジーを吸われては、あの安土でさえも倒れてしまうわね」
「エナジーを吸われてもピンピンしていたら、驚くわよ」

 ガーネットの言葉を受けて、かぐやはクスクスと笑った。

「そうね」

 かぐやが柔らかく笑う表情を見て、ガーネットは喜んでいた。

 ランカウラスの無駄遣いだと、かぐやに軽く一括されたが、やっぱり良かったとガーネットは自分を褒めた。

 そうして、安土の現れない日々を満喫していた。

 その時、足音が聞こえて来た。

 その足音を聞いて、ガーネットは草むらへと去って行った。

 大木に寄り掛かりながら、誰だろうと、かぐやが視線を注いでいると、明るい声が飛んできた。

「かぐやちゃん、いるぅ?」
「……うさぎ…」

 団子に結った金髪の髪を靡かせて、うさぎが現れた。

「やっぱりいた!!」

 どうやら昼休みに入って、すぐにかぐやのクラスまで赴いたらしいが、かぐやの姿はない。

 またサボったのだろうと、少しムっとしながらこちらにやって来たらしい。

「授業、ちゃんと受けようよ」

 うさぎは、大木に寄り掛かるかぐやに近寄って、座り込んで言った。

「うるさいな〜。いいでしょう。ちゃんとできるんだから」

 かぐやはうさぎに目線を合わせずに、鬱陶しそうに答える。

 うさぎは、「ちゃんとできる」というかぐやの言葉に、羨ましさを感じていた。

「私なんか、授業を受けていても分からないのに……」
「それは、それは、ご愁傷様」

 あっさりとしたかぐやの言葉に、うさぎは少し落ち込んだ。

「で、何の用?」

 最近、夜天と同じくらい、うさぎもかぐやに積極的に関わってくる。

 二人に対して面倒だという気持ちにはなるのだが、どうしてか、流されてしまう傾向にある。

「あ、うん。あのね、最近、色々落ち着いたじゃない?」
「………そうね…」

 うさぎは安土のことを言っているのだろう。

 かぐやは、少し躊躇ってから返事をした。

 少しだけ、嫌な予感がしたというのもある。

「だから、久しぶりにクラウンに行かない?」

 人差し指を立てて、明るい笑顔でうさぎが聞いた。

 そんなことだろうと予想しており、かぐやは軽く息を吐いた.

「嫌?」

 かぐやの様子を見て、うさぎが顔を覗き込みながら尋ねてきた。

 うさぎの顔は、かぐやを心配しているような表情をしており、かぐやはうさぎのその表情に弱い。

「別に…嫌じゃないよ……」

 かぐやのその言葉を聞いて、うさぎはパッと明るい顔になった。

「本当!?じゃぁ、放課後、教室に迎えに行くから待っててね」

 そう言うと、うさぎはその場から立ち去って行った。

(きちんと授業を受けろということね……)

 うさぎの立ち去った方を見つめながら、クスっと笑った。

「ふぅ〜ん」
「っ!!」

 和やかな気持ちに浸っていると、背後から声が掛けられた。

 振り向くと、草むらから出てきたガーネットがいた。

「ガーネット」
「あの子には、懐いたのね」
「懐いたって……」

 まるで猫のように言われたので、かぐやはため息をつきながら、ガーネットを抱き上げた。

「そんなんじゃないよ」
「どうだか」

 拗ねた声音でガーネットは呟いた。

 かぐやは拗ねるガーネットの向きを自分の方に向けて、真剣な眼差しを向けた。

「うさぎの家に、三日月ハゲのある“ルナ”って名前のネコがいるらしいのよ」
「っ!!」

 初耳のガーネットは驚いていた。

「いつ?」
「この前、うさぎから聞いた。あなたの三日月ハゲを見て……ね」

 ガーネットは思わぬ情報に、かぐやと同じように疑いを持った。

 ルナ自身を見ていないが、ここまでぴったりハマる情報もないだろう。

「もしかしたら、あの子…セレニティに関係あるのかもしれない」

 もしくは、セレニティ自身か――…

「なるほど、納得」

 ガーネットはかぐやの意図を理解した。

(でも……)

 それにしても、馴染み過ぎているように、ガーネットには感じられた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ