昏い銀花に染められて…

□the present 2.
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 その頃、十番公園の近くにあるアパートに一人の少女が帰って来ていた。

「おかえり」
「ただいま、大家さん」

 漆黒の長い髪を靡かせて、その少女はアパートの外に出て掃除をしていた大家さんに挨拶をしていた。

 そして、2階ある自分の部屋に入って行った。

「おかえり」
「ただいま、ガーネット」

 帰宅すると、玄関まで紅色のネコが迎えた。

 その少女は一旦座り込み、そのネコを抱いて、また立ち上がりベッドに座り込んだ。

「どこに行っていたの?」
「ん?ちょっと散歩よ」
「そう」

 ガーネットと呼ばれたネコは、その少女が珍しくどこか楽しそうな表情をしていることに気付いた。

「何か、あったの?」
「ん?うん♪」

 大人っぽい雰囲気を受ける少女だが、こういう時は年相応の感じを見せる。

「エンディミオンと同じ瞳をした人を見つけたの」
「え!?」

 少女のその言葉にガーネットは驚いていた。

「そうなの。その人が生まれ変わりだったらいいわね」
「そうね」

 そして、一息つくと、ガーネットはまた話し始めた。

「さっき、ランカウラスを開花させたんだけど……」
「こんな昼間から、そんなことしてたの?」
「いい鴨が引っかかってくれたから……でも……」
「失敗したのね」

 残念なのか、そうでないのか、読めない大人な表情で少女はガーネットを見下ろしていた。

「まぁ、まだ始まったばかりだし」

 そう言って、少女はガーネットをベッドに下すと、立ち上がって窓の外を見上げた。

「そうやって、空を見上げるのが好きね、かぐや」

 かぐやと呼ばれた少女はガーネットの方を振り向いて、フッと笑った。

「えぇ、特に夜空が好き」

 その笑みはどこか、妖艶で、瞳はとても昏かった――…。





the present 3.
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