昏い銀花に染められて…

□The present 1.
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『セレニティ……』
(誰?)

 一面の真っ暗闇の中、ある一点から光が差し込んでいた。

 そして、その光に照らされた一人の少女の姿が見える。――だが、逆光で顔は分からない。

 セレニティと呼ばれた白いドレスを纏った金髪の少女は、ボヤけて見える、自分を呼びかける、その少女を必死に見つめた。



『あなたの傍にいられるだけで、
私はいいのよ』



(え?)

 金髪の少女はその言葉を以前、誰かに言われたような気がした。

 だが、思い出せない。

(っ!!)

 考えていると、急に突風が吹いてきて金髪の少女は両腕で顔を覆った。


「…んご…お……おだんご」
「誰?」

 また、違う声で呼ばれた金髪の少女は、顔を覆った腕をどけて、正面を見た――…。




「わっ!びっくりした」
「ふぇ?」

 机にうつ伏していた金髪の少女が、急に顔を上げたので、黒髪を一つに束ねた青年が、驚いて声を上げる

 そして、まだ寝ぼけ眼の金髪の少女は目の前の黒髪の青年を、しばらくじっと見ていた。

(………)
「おいおい、すげぇなぁ」

 あまりの寝ぼけっぷりに感心している。

「っ!!」

 そして、急に目を大きく開かせて、少女は大きな声を出した。

「星野!!どうして、いるの!?」

 金髪の少女=【月野うさぎ】の大声にクラス中、さらには廊下を歩いていた生徒たちも、驚いて顔を向けた。

 目を覚ましたうさぎがよく見ると、黒髪の青年=【星野】以外にも、茶髪の青年=【大気】がおり、銀髪の青年【夜天】がいた。

 さらに――…

「うさぎちゃん!!大気さんたちが学校に来ている……って……」

 と言って、他クラスの親友、青色のショートカットがとても知的な印象を受ける、【水野亜美】が慌ててうさぎたちのクラスに掛け込んで来た。

「「「亜美ちゃん……」」」

 大きな赤いリボンが印象的な金髪の長い髪を下している【愛野美奈子】は含んだような笑みを見せ、茶髪をポニーテールに結った長身の【木野まこと】は目を見開かせて驚いており、うさぎは呆れた顔をしていた。

「あ、アハハハハ」

 亜美は照れ隠しをしつつ笑っていた。




 少し前、この地球はある魔の手によって、滅ぼされそうになっていた。

 だが、愛と正義の美少女戦士たちの働きにより、以前と変わらず、平和に過ごしている。

 その時、地球に降り立った自分たちの星のプリンセスを探し出すために、やって来た太陽系よりも遠い星の戦士たちがいた。

 スターライツの3人だ。

 だが、その3人も戦いを終えて、プリンセスと共に去って行った――…はずなのだが……




「どうしたっていうの?」

 HRが終わり、うさぎたちは屋上へと集まった。

「キンモク星には帰らなかったのかい?」

 まことも星野たちの返事を待たずに尋ねる。

「夜天の付き合いだよ」

 と、夜天を親指で差しながら、星野は言った。

「夜天くんの付き合い?」

 美奈子が顎に指を当てて、頭の上に疑問符を浮かべる。

 当の夜天は、根ほり葉ほり聞いてくる、うさぎたちに面倒くさいというような態度を見せていた。

「夜天……」

 大気がため息をついた。

「なんだよ?大気」
「今更、そんな風に面倒くさがる間柄でもないでしょう」

 背後に控えた大気と夜天がコソコソと話し合う。

 以前のギャラクシアとの戦いで、うさぎたちと星野たちの間柄は親密になっていた。

 ブスっとした表情のまま夜天は、観念し、話し始めた。

「ちょっと、気になる輝きを感じたんだよ」
「気になる輝き?」

 うさぎがさらに尋ねた。

「シルバー・キングダムって月の王国のプリンセス……カグヤの気配だよ」

 夜天は言い捨てた。

 うさぎたちは夜天の言葉に、驚いた目をしていた。

「月に?」

 まことが聞きながら、呟く。

「シルバー・ミレニアム以外に……」

 亜美が続けて言う。

「王国があったの?」

 うさぎが星野の方を見つめて、聞いた。

 美奈子は黙って、夜天のことをじっと見ている。
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