昏い銀花に染められて…

□the past 6.
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「っ!!」

 先ほどまで、セレニティが恐怖で体を震わせていたのだが、それ以上にカグヤは体を震わせ、目を大きく開いていた。

 そして、セレニティを包んでいた手を解き、フラっと立ち上がると、ガーネットの方に力ない足で向かい始める。

「やめろっ!!」

 Q・ベリルと対峙したままエンディミオンが腕を広げてカグヤの行く手を阻んだ。

 ガーネットが倒れているのは、Q・ベリルの後方だ。

 Q・ベリルの前に出た途端、その刃がカグヤを襲うだろう。

「ガーネット!!ガーネット!!!!」

 行く手を阻むエンディミオンの腕を掴みながら、カグヤは泣き叫んだ。

 シルバー・キングダムが崩壊して、唯一の同族のモノ。

 生まれた時から一緒にいる付きネコ。

「いやよ…いや……いやあああああああ」

 自らの血の海に倒れて動かないガーネットに、カグヤは何も考えられないでいた。――セレニティを守ることさえも忘れている。

『ククク。絶望の叫び……なんという快感か……』

 Q・ベリルは妖艶な笑みを見せた。

『お前たち、皆、あのネコと同じにしてくれるっ!!!!』

 そう力強く言うと、Q・ベリルはありったけの力を放出し、それを3人に向けて放った。

「「「!!!」」」

 あまりの強い力の渦に巻き込まれ、カグヤの視界は真っ白と化した。



そのあと何が起こったのかは
分からない――…





「!!!!」

 騒ぎを聞きつけて、先ほどまでカグヤとQ・ベリルが対峙していた場所まで、Q・セレニティがルナたちを引き連れてやって来た。

「そんな……」

 Q・セレニティは脱力して、その場に座り込んだ。

 愛娘のP・セレニティと、彼女の愛したエンディミオン、そして、亡き姉の愛娘であるカグヤとその付きネコ、ガーネットの無残な姿が目の前にあった。

 Q・セレニティに付き添っているルナとアルテミスも信じられない光景に瞳を揺らしている。

 城の外では、P・セレニティの守護戦士であるヴィーナスたちも無残に殺られてしまっていた。

 Q・セレニティは絶望を味わった。

 そして、弱々しい足取りで城の外へ出ると、幻の銀水晶=シルバームーン・クリスタルの力を解放した。

「クイーン!!そんなことをしてはあなたのお命が!!」

 ルナがQ・セレニティの足元で叫ぶ。

 だが、Q・セレニティはシルバームーン・クリスタルの輝きをさらに増して輝かす。

「ルナ…私にはもう何も残っていないのです」

 シルバー・ミレニアムはシルバー・キングダムのように、瓦礫の山となり、人々もいなくなった。

 Q・セレニティの守るモノがすべてなくなったのだ。

 あとは、敵を滅するのみ。

「そんな……」

 苦い声を発するルナに、Q・セレニティは笑顔を向けた。

「大切な彼女たちを転生させます。ルナ、アルテミス。彼女たちの傍にいてあげてください」
「「クイーン!!」」

 Q・セレニティは2匹のネコにそう言い残すと、月全体を包み込むほどの勁い輝きを放った。



†   †   †



「ん?」

 月から遠く離れたキンモク星で、ヒーラーはふと何かを感じ取った。

「どうしたの?ヒーラー」

 ファイターに尋ねられたが、それが何か分からないので、「何でもない」と答える。

「2人とも、ちょっと……」

 すると、出ていたメイカーが部屋に戻ってきたなり、2人を呼んだ。

 どうやら、火球が呼んでいるらしい。




 火球に呼ばれて部屋に入った3人は、こちらを見つめる火球の真剣な眼差しに、緊張した。

 そして、火球が重く口を開く。





シルバー・ミレニアムが
地球の者の手によって、滅ぼされました……






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