昏い銀花に染められて…
□the past 1.
1ページ/4ページ
「カグヤ……プリンセス・カグヤ」
純白のドレスを着た、金色の長い髪を2つのお団子に編んで、その先をツインテールにして流している少女が、辺りをキョロキョロしながら歩き回っていた。
どうやら、誰かを探しているようだ。
そして、何か急ぎの用なのだろうか、必死に探している。
「カグヤ!!……もう、カグヤったらどこに……ん?」
金髪の少女がある大きな木の生えている付近で、ため息をついていると、風も吹いていないのに、その木の葉が数枚、パラパラと散って来たのだ。
おかしいな、と思い、上を見上げた。
「あっ!!」
少女は驚いた。
その大木の太い幹に、自分と同じようなドレスを着た少女が寝転んでいたからだった。
「ま〜た〜!!そんなところにいたのね、カグヤ!!」
カグヤと呼ばれた、幹に寝転ぶ少女は、「五月蝿いなぁ」といった体で体を起こして、木の根元に立つ少女を見下ろして言った。
「別にいいでしょう?私がどこにいようと」
「なっ!?」
この数分、一生懸命探していたというのに、そんな風に言われるとは思わず、金髪の少女はワナワナと体を震わせていた。
「あら?怒った?セレニティ?」
「怒ってませんっ!!」
ここは、月の世界。
その月でシルバー・ミレニアムという王国が栄えていた時代のことである。
クイーン・セレニティがシルバー・ミレニアムの城主で、先ほどの金髪の少女=プリンセス・セレニティはその娘である。
そして、P・セレニティが必死で探していたP・カグヤはP・セレニティの従姉妹にあたる。
カグヤはシルバー・ミレニアムとは別に、月の世界で栄えていた王国、シルバー・キングダムの生き残りだ。
シルバー・キングダムの城主であったカグヤの母親は、Q・セレニティの姉であった。なので、シルバー・ミレニアムとシルバー・キングダムの両王国はとても良好な関係を築いていた。
だが、ある年の天災により、シルバー・キングダムの全土が崩壊。
同時に、城主であるクイーンとキングも亡くなられ、シルバー・キングダムは壊滅してしまった。
その王国の唯一の生き残りが、このカグヤであった。
先に述べたように、カグヤはQ・セレニティの姪にあたる。
シルバー・キングダムの壊滅を聞いたQ・セレニティは、自分の王国にカグヤを呼び寄せ、そして住まわせたのだ。
カグヤはその初めよりはマシにはなったが、今でも自分は“居候”と思っており、どこか線を引いているところがある。
だが、元々、従姉妹であるP・セレニティとは仲が良かったので、2人でいる時はとても良い表情をしている。――それは今も昔も変わらないところだ。
カグヤはセレニティとは対照的に真っ黒の長髪を右側に1つに束ねている。身長はだいたい165pほど。セレニティより2つ年上なので、どこか大人っぽい雰囲気も漂わせている。
しかし、性格はとてもお転婆だ。
城内に留まるよりも、広い草原へと繰り出して、パートナーとも言える、紅色のネコ=【ガーネット】と共に走り回っている姿がよく見られる。
さらには、ドレスを着ているというのに、平気で木に登って行くのだ。
カグヤの侍女たちは、ドレスが破れないだろうか、とか、落ちて骨折などしてしまわないだろうか、などと、ハラハラ・ドキドキの毎日を過ごしている。