おひとりさま
□第4歩
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『次は終点…テンヨウ区です。ご利用頂き、ありがとうございました。イザナミ町行きの電車は―』
終点を知らせる放送が聞こえてきた。
テンヨウ区はゆらはんだけでなく、ボクにとっても初めての場所。
ばあちゃん曰く、霊術士が多い街らしいから、気を付けていくで…。
ゆら「ふう…やっと終点に着いたね!」
イナリ「そうですなぁ。でも…何だか静か過ぎる気がしないでも…。」
―そう、此処、テンヨウ区に向かう電車は途中で幾つかそれなりに大きな街に停車し、その度に人が乗り込んできたんですが…。
乗り込んできた人達は、全員テンヨウ区に着く前に降りてしまったんです。
いかにも「テンヨウ区には何かがある」と言わんばかりじゃないですか?
ゆら「うーん…確かに人がいないよね。…あっ!イナリ!あそこに人が!」
ゆらはそう言うと、父親の事を聞こうと走っていってしまった。
イナリ「ゆらはん!?置いていかないで下さいよ!」
イナリも浮いた身体で精一杯宙を蹴ってゆらに付いていった。
ゆらを追いかけて石造りの家の角を曲がったイナリは足を止めた。
いや…この状況では『止めざるを得なかった』と言った方が正しいだろう。
彼の前には、真っ黒な狼が構えていた。
そして、遠くにゆらの姿が見受けられたが、また何処かの家の角を曲がり、見えなくなってしまった。
どうやら、ゆらとイナリは何らかの罠にはまってしまったらしい。