掛け算SS

□ゼロ以上、ゼロ以下
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それは少しでも指針が振れればまるで違うものに変化してしまう。
そんな細く脆い道をおぼつかない二本の足は踏みしめている。
ほんの一歩でもあちらへ足を伸ばせばそちらの道はぐらりと傾き、
ほんの一歩でもそちらへ足を伸ばせばあちらの道はぐらりと傾く。
僕がいま収まっている、どちらの道にも影響しないこの上手いバランスを取っている地点では、物事は絶対に発展しないが現状は永遠に続くだろう。
それでもいい。いや、むしろその方がいい。
……その方が、いい。
いつか再確認した均衡の心地良さ。
起きているが眠ってもいる日常。
日向ではなく、陰影でもなく、屋内の窓際で日差しを浴びている自分。
……そもそもの、原初は?
――所為は考えたくない。
相関。役目。
僕の位置は何を以て正解となるのか。


『古泉くんをSOS団副団長に任命します!』


――やはり、ゼロ、か。


『僕では役者が不足しています』


そう言い聞かせてもうどれくらい経つのだろう。


2010,2,21

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