記念小説

□日の出の温もり
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「もうすぐ、夜が明けるな…。」

夜の闇が徐々に白み始め、東から朱を帯びた光が空を彩り始めた。
その様子を清正は宗茂に背を預けながら眺めていた。

「あぁ、そろそろ日の出だ。」

清正を背から抱き締め、空を眺める宗茂。
ツンとした空気が頬を撫で痛いが、抱き締めた清正の温もりはとても温かい。

「清正は、温かいな。」

「そうか?」

「あぁ、温かい。」

抱き締め顔を肩に埋める宗茂の髪が頚を撫で、擽ったい。

「ん、擽ったい。」

「すまない、寒くてな。」

「っ!?宗茂、耳元で喋るな馬鹿!!」

「ふふ、すまない。」

「謝るなら離れろ!!」
そう言って身を捩る清正を少し強く包み、耳元で囁くように言った。

「無理だな。」

「ッ!?宗茂止めろって!!」

「俺が、お前を離せるわけないだろう。」

そう言って、ぎゅっと抱き締める。
背中には宗茂の温もりが伝わる。

「…馬鹿。」

その温もりを背中で感じながら顔を見られまいと、清正は再び空を眺めた。

空は明るさを増し、東は朱に染まる。

そして、ゆっくりと昇る太陽を2人は眺めた。

優しくも眩い赤い光は2人を照らす。

「…宗茂。」

「何だ、清正。」

「温かい、な。」

己を抱き締めた腕にそっと手を置き、きゅっと着物の袖を掴む清正。

宗茂は、赤く染まった顔を、日の光に隠そうとする恋人を愛しく思った。

【日の出の温もり】

今年も、体温を感じるぐらい近くに居られたら、それで幸せ。


 

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