蝶の軌跡を彩る鱗粉

□「帰る場所」を見付けた
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「ちょっと待ってて下さいね」


そう言われて、玄関で座って待つ

家の中は美味そうな匂いが一杯だから待っているのはツラいけど、大抵の人間はこっちが大人しくしてるとご飯をくれる
だから、頑張ってガマンしてた



人間は何をしてるんだろう?と考えてたら、タオルを持って戻ってきた


俺の前に座って、微笑む


「顔を拭くので、目を閉じてて下さい」


何だか安心する、優しい声


言われた通りに目を閉じて、手も拭かれると、椅子まで連れていかれた


テーブルの上には、ご飯が置いてあって、どれも美味しそうな匂いがする


見てたらお腹がなって、人間は「すぐ用意しますから」って笑っていた


冷蔵庫を開けて、「ネギ」とか「ハム」とか、色んな食べ物の名前を言ってる

…ネギは食べれないから、出されないといいな


俺はそんな事を考えてた



「これなら食べれますか?」


しばらくして、パンにハムとチーズが挟まったものが前に置かれた

皿に小さな山が出来てる


確か、サンドイッチだとかいうものだ、どっかで聞いたことがある気がする



『食べていいのか?』


手を出す前に、聞いておく

少し考えるような顔をしたこど「どうぞ」と言われたから、ありがたく頂く


「あの…足りなかったらまだありますから、落ち着いて食べて下さいね」



心配そうな声で言われたから、ちょっとゆっくり食べることにした

そしたら小さく笑って、水が置かれて、サンドイッチも追加された



そのあと、人間も自分のご飯を食べ始めて、サラダに乗ってたゆで卵をくれた





皿が空になって、水を飲む

…ちょっと苦しい


「お腹いっぱいになりましたか?」

『あぁ!ちょっと食べすぎたくらいだ!』

「それは良かったです」



後片付けをしながら、楽しそうに笑う


ご飯をくれる人間は(大体子供だけど)たくさん居たけど、家に入れてくれた人間は初めてだった


優しいし、ご飯も美味しかった

恩返しに何かしたかったけど、「お腹が落ち着いたら、お風呂に入ってもらいますからね」と言われた



…お風呂って何だ?

聞いたことない言葉だ





分からないまま、大人しく人間を見る


後片付けをしてる姿

俺と同じくらいか、ちょっとだけ大きい



ずーっと、終わるまで見てた




 
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