蝶の軌跡を彩る鱗粉
□「帰る場所」を見付けた
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風が強く、カタカタと窓が揺れる
どさっ と、その中に紛れて聞こえた音
「?…なんでしょう」
何かが倒れた、もしくは落ちたような音
玄関の方から聞こえた気がする
何か置いていただろうか?
「………?」
夕食を中断し、念のためチェーンは掛けたまま少しだけ扉を開けて様子を伺う
なにもない、ように見える
だけどよく見ると、1メートルもない場所に何か黒くて大きな塊があった
(なんでしょう?)
チェーンを外して、扉を開いた
すると、音に反応するように塊が動く
「………?犬?」
警戒しながら近寄ると、狼と見間違えるような黒い犬が蹲っている
「えと…大丈夫ですか?」
「………くぅ〜…」
力無く鳴いて、尻尾がぱたぱたと動く
金色の虚ろな瞳がこちらを見ている
怪我をして、動けないのかもしれない
これだけ近寄っていても威嚇しないのなら、人間に慣れているのかも
「動けますか?…動かしますよ?」
一応声を掛けてみると、こちらの言葉を理解したのか、自分で起き上がり、じーっと顔を覗き込んでいる
(大きいですね…)
私も屈んでいるとはいえ、目線の高さにあまり差はない
手を近付けると、顔を擦り寄せてくる
これだけ慣れてるなら大丈夫だろう、そう判断して玄関に招き入れた