蝶の軌跡を彩る鱗粉

□オオカミさんとウサギさん
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家に帰るといい匂いがした

リビングに行くと、長い耳を揺らして作業をするフェイの姿が目に入る


動く度に揺れる、白いシャツの裾

俺達とは違う弱々しい華奢な身体で、大きな鍋の中身をかき混ぜている


近付くと耳がぴこぴこ動いて、俺が触れるより先に振り向き、首を傾げた


「…どうかしましたか?」

「いや、…何を作ってるんだ?」

「シチューですよ」


ほら、と言わんばかりに鍋に向き直りこちらを見上げてくるから、フェイを腕の中に閉じ込めて鍋を覗き込む

確かに、この美味そうな匂いは俺の知ってる、否、狼ならば嫌いなやつはいない、あのシチューのものと似てるな


「もう少し煮込めば完成です」

「…そうなのか?」


完成間近ならこれ以上食材が足される事もない、って事だよな?


「シチュー食べたことないんですか?」

「…肉が入ってないのはな」


俺の言葉にフェイが固まる

そういえば、ウサギは肉を食わないらしいから、入ってなくて当たり前か


だが、そうは思っても


「お肉、…必要、ですか?」

「当たり前だろう。…シチューならウサギだな、ウサギのシチューは美味いぞ」

「っ!!…そう、ですか。でしたら、」


火を止め、振り返り俺を見上げる
瞳には今にも零れ落ちそうなほど涙を溜めていて、震える声で言葉を紡ぐ


「た、食べますか…?私、を…」

「食べていいのか?」

「……だって、私は…非常食、なんでしょう?だからっ……だから、…っ!!」


言葉の途中で涙が流れ、床に落ちた

宥めるように頭を撫でてやり、少し屈んで長い耳の付け根を口に含む

フェイの身体が強張る
それでも、きつく目を瞑りされるがままだ


軽く耳を噛んでみる
その度に小さく反応を返す身体



背に回した腕でシャツを捲る
それ一枚しか着ていないフェイの身体を露出させることは実に容易い

恐怖か、羞恥か


震える身体に手を這わす


「…っ!?あっ…ん、ふぁ……ぁ…」


片手は背を撫で、片手は尻尾を弄る

ビクビクと素直な反応を返す身体、甘く濡れた声も耳に心地よいものだ


「フェイ、顔を上げろ」

「ふぁ……は、ぃ…んっ!」

「…いい子だ」

「んんっ!!?ッ…ふっ、ん、んー!」


大人しく従うフェイにキスをする


「ふっ…あ、んーっ!!…ゃ、やっ…!」


触れるだけ、なんて優しいものじゃない

息苦しさからか、フェイの身体は無意識に逃げようとアースの身体を押し返す

だが体格差がそれを許さない
それどころか、逃がさないと言わんばかりに背を撫でていた手に後頭部を押さえられ、更に深く口内を味わうように舌を絡められる


「んむっ!……はっ…はぁ、もぅ…や」

「なんだ、もう息切れか?」

「ひゃっ…ぁ!!はぁ…ゃ、ぃや…」


長いキスの終わりと同時に、耳に噛み付き、尻尾の付け根に爪を立てた
途端に恐怖に染まる表情

呼吸が乱れ、足元がふらつくフェイを支えながら椅子に座り、膝立ちで跨がらせる


「……ふっ…ひっく、ゃ…っく…」


暖かい雫が頬に落ちてくる
本格的に泣き出したフェイは、力一杯両手を突っ張って抵抗を始めた

それでも、狼とウサギ、大人と子供の力の差は歴然で、大した意味は成さない


「食べていいんだろう?」

「…っ……あ、……!!」


 

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