蝶の軌跡を彩る鱗粉

□素直じゃない3
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ここ数日、公務が忙しくフェイと話す時間がない

そんな事などお構い無しに仕事を持ってくる家臣達に対して色々と言いたい事を抑え、書類に目を通す

「…コレで最後ですよ」

机に置かれる書類の山に逃げ出したくなる

「…(本当に最後なのか?)」

多少の疑いを抱きつつも

この量なら昼過ぎには終わるだろうか

後に訪れるであろうフェイとの時間を得るために、書類の山に手を伸ばした





「ところで陛下、大切な話があるのですが」

ある程度、書類を片付けたと同時に話始めた家臣

聞かずとも内容は分かる

家臣に聞こえないように小さくため息を吐く

「…悪いが、忙し「大切な話があるのですが」

それに数日分の仕事はほとんど終わりましたよ、と書類の整理をしながら言う

最近、書類の量が増えた原因はお前か

わざと増やしてまで問う事なのか

フェイと居られる(筈だった)時間を返せ

「(色々と言いたい、が)…なんの話だ」

何を言っても答えを用意していそうな家臣を軽く睨みつつ、無駄な抵抗を止め先を促す

「単刀直入に言いますが、フェイ様とは一体いつ式を挙げるおつもりで?」

「………。(それは)俺が訊きたい」

小声ではあるが、言ってしまった言葉

「いや、なんでもない…忘れてくれ」

無言のまま呆れた表情の家臣に告げる

―――…結婚式、か

挙げられるものなら早く挙げてしまいたいが


『幸せなのね。王子が憎いわ』


蘇ってくるのは、あの日偶然聞いてしまったカバネの言葉

彼女の許しを得ずにフェイを妻に迎えてしまったら最期、何をされるか判らない

いや、何が起きるか分からない…か

「どうするおつもりですか」

「…(答えるまで聞き続けて来そうだ)」

まともに話を聞いて貰えるか判らないが、直接会いに行くべきか

「陛下」

「分かった、フェイと話し合っておく」

「…そうですか。ですが、出来るだけ早めに願いますよ。コレは民の望みでもあるのですからね」
では失礼します。と、静かに部屋を出る家臣を見送る


一人残る部屋で、思う


『幸せなのね。王子が憎いわ』

フェイ以外にら見せる事のないであろう笑顔と、優しい声で紡がれた言葉

一体、なんと言って彼女を説得しろと


『王子が憎いわ』


頭の中で繰り返される言葉

果たして俺に、カバネを説得する事は出来るのだろうか


 

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