蝶の軌跡を彩る鱗粉

□素直じゃない2
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広い城内でアースさんを探すのは大変な事

家臣の方に見付かってしまったら長いお話に付き合わされてしまうし、女中の方に見付かると逃げられない

「(前は向こうに行って捕まってしまったから、今日は)」

「あら、王妃様」

城内でアースさんを探していると、必ずといっていい程

私を捕まえる彼女

どうして、いつも私が行こうと思う方に居るんでしょう?

「すみません。急いで「なにを急いでいるのですか?陛下でしたら家臣の方に捕まっていますよ?」

言葉を遮られ、逃げ道を塞がれる

彼女には人の心が読めるんでしょうか

「(アースさんに彼女に気をつけるよう、言われているのに)」

「お暇ですよね?王妃様」

彼女の仕事はどうなっているんでしょう

女中の方達の中で一番発言力があるそうですが、あまり仕事をしている姿は見掛けませんね

「…急いでいるので、失礼します」

この場から逃れる為に、話を切り逃げ…歩き出す

けれど、

「陛下が解放されるまでは暇でしょう?少し付き合って頂けませんか?」

腕を掴まれ引き止められてしまう

「………(何か言わないと、肯定と取られてしまう、けど)」
答えを間違えたらこのまま捕まってしまう

それに、彼女に捕まると半日近く解放されない

「…(どうしよう)」

「さっき仕立屋の方に頼んでおいたドレスが届いたんですよ。すべて王妃様に似合うものばかりなんです」

答えを聞く気はないんでしょうか

私に楽しそうに話し掛けられても

貴女が楽しそうにしていると、何故か言い表せないような不安に駆られます

「ドレスなら先日も頂いたばかりなので…」

「王妃様に着て頂く為だけに作られたドレスを断られるんですか…?」

そう悲しげに話ながら、彼女は目元に手をあて泣き真似をする

私の腕を掴んだまま

ずるいです、これでは断れないじゃないですか

姉さんの気が変わってしまう前に、アースさんを連れていきたいのに

「少しだけ、なら…」

「20着くらいあるんですが…少しだけ、なんですか…?」

何故そんなにあるんですか

私の答えなんて聞かずに腕を引き、楽しそうに話す彼女に連れていかれながら思う

私は今日、アースさんに会うことが出来るんでしょうか


 

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