蝶の軌跡を彩る鱗粉
□恋人として、少しずつ
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「さて、そろそろ寝るか」
「っ!!そぅ…です、ね…」
「??…どうした?」
日が変わったばかりの深夜
一日中買い物や片付けに追われたせいか、いつもより早く訪れた睡魔
ソファで寛ぎながら、何気なく口にした言葉にフェイは大袈裟に反応した
そういえば、風呂を出た頃から、俺と目を合わせようとしないし
風呂で温まり上気していた頬は、今は耳までも鮮やかな朱に彩られている
何かあっただろうか?
今日起こった事が頭を駆け巡る。だが、いくら考えても答えは出てこない
フェイに視線を移した
大人しく座り、膝に手を置いて黙り込んだまま、視線だけがさ迷っている
「…先に部屋に行くぞ?」
「ぇ…あ、私も行きまっ…!」
声を掛けると、慌てたように顔を上げた
だが、視線が合うとすぐに逸らされる
疑問は尽きないが、嫌われてしまった訳ではないようで、時折、不安に揺らぐ瞳が俺の様子を窺っている
それでも、部屋に戻ってからも相変わらず
挙動不審としか言いようがない態度
「なんでそんな端に居るんだ?」
「……っは、端が…好きなんです」
ベッドの上、二人の間にはもう一人くらい一緒に寝られそうなスペースがある
「…消すぞ」
端っこから動きそうにないフェイに声を掛けて、明かりを消した
ひとつのベッド
片側に寄るアースと、背を向けて落ちそうなくらい端っこにいるフェイ