蝶の軌跡を彩る鱗粉
□これからは
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「フェイは…隠していたつもりかもしれないけど、貴方に会いに行くときは、いつも楽しそうだったわ
それでいいと思ってた。フェイが笑っていてくれれば、それで…」
でも、貴方は気付かなかった
フェイと同じ想いを抱いていたのに
気付かないから、失った
例え、あの子が戻って来れたのが、貴方のおかげだとしても
一度だけとはいえ、フェイが貴方のせいで私達の前から居なくなったという事実に変わりはない
「だから、私は貴方を許さない」
「…あぁ」
「でも、貴方の隣に居ることがあの子の幸せだというのなら、あの子が笑顔でいる限り、貴方を咎めないでいてあげるわ」
「カバネ…」
「ただし!もしフェイが、たった一言でも、貴方に対して不満を訴えたら…」
「っ!?」
王子の服の襟元を掴み、引き寄せて、間近で下から睨み付けながら
「沈めるわよ」
可能な限り低く、冷たく突き刺さるように、僅かに殺意も込めて告げる
「あぁ、肝に銘じておく…」
逆光で分かりづらいけど、少し青ざめた様子の王子は、私と目が合っているのに、どこか遠くを見つめている
「ま…ここ数日の様子じゃ、特に不満なんてなさそうだったけど」
襟元から手を離し、最近のフェイの様子を思い浮かべれば、いつも笑顔だった姿しか出てこない
「そういえば、ずっと見ていたんだったな…なんですぐ、フェイに会いに来なかったんだ?」
「貴方がソレを言う!!?」
思わず上げた声
確かに、王子にとっては疑問に思うかもしれないけど、貴方がフェイの様子を見に来る回数が多いからでしょう
「…カバネ?」
第一、ここに他の人間が来たことはないんだし、そんなにしょっちゅう様子を見る必要はないじゃない
「どうかしたのか…?」
しかも来るたびにフェイに触るし、すぐ抱き締めるし、キスだって当たり前みたいになってるし
「おーい…」
フェイも抵抗しないし、それどころか恥ずかしがりながら応えてるし
それもこれも全て
「カバネ…大丈夫か?」
「貴方のせいよ!この…セクハラ王子!」
「なんだ突然!?」