仕立屋工房隠し部屋

□自重しましょう
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「そういえば、お前にとっての贅沢ってなんだ?」

「…ふぇ?贅沢…ですか?」


珍しくのんびりとした味見後の時間

アースが思い立ったように問い掛けた

身体に残る気だるさに身を任せたフェイは、意識が微睡む中で答えを探す


「お前からはあまり…というか、全然欲を感じないからな、なんか無いのか?」

「欲、ですか?………ありますよ?」

「……そう、なのか?」


後ろから抱きしめているアースに身体を預けて、フェイは眠たそうな顔を向ける

一方アースはその答えが意外だったのか、湯の中でフェイの身体を撫でていた手を止めて、思考を巡らせる


出会ってから今の発言まで、否、今の発言を聞いても、彼女から欲は感じ取れない

無欲、そう言い切る事が出来る


「贅沢な、我が侭なんです…」


フェイはゆっくりとした口調で眠気に耐えながら、ふにゃふにゃと言葉を紡いだ


「我が侭か…言うだけなら自由だぞ?」


優しく掛けられたアースの言葉に、フェイは子供のような幼い笑顔を浮かべた
そして、水の跳ねる音と共に手を伸ばし、空に大きな円を描いて


「私の我が侭は、お腹いー…っぱい、にんじんを食べること、なんです」


とても楽しそうに語った


「………にんじん?」

「はい。にんじんです」


なんでにんじんを食べる事が贅沢な我が侭なのか、不思議だと思いながらも、にんじんをウサギに置き換えてみて、理解する
自分の好きなもの、しかもそれが簡単に手に入らないものだからこそ、贅沢な我が侭になるのだ


そう考えると、自分は随分と贅沢をしている気がする

毎日好きな時に好きなだけフェイ(ウサギ)を味わっているのだから



「んっ!…アースさん?…あ、ふぁ…!」


ぱしゃんと水面が波立つ

不意に確かな意思を持ち身体に触れる手の平、慌てて押さえようとするも、さっきまでの味見のせいで身体に力が入らない


「あっ…味見は、もう……今日は…しない…って、はぁ…ゃ…」

「気が変わった」

「そんなっ…ひゃっ!!」


せめてもの抵抗に反論してみるも、身体は湯の温度とは違う熱が宿り始めた

散々味見に慣らされてきた為、身体は意に反して抵抗を拒み、アースを受け入れている


「身体は違うみたいだぞ?」

「やっ…!そんな、ことっ…ない、あ、ぁ……ダメ…っ!」

「そのわりには、随分と良い声で鳴いてないか?」

「あ、お風呂は…だめって……っ!!」


びくびくと震える身体

限界が近付いているらしい
俺の腕を掴んで、耐えようとしている

風呂に入る前まで味見していたおかげで、身体は随分と素直な反応を返す


「ふっ……ん、あ、んゃ…!」


イヤイヤと首を振る

フェイにとっては達する直前の一番もどかしくもある時間であり、俺にとっては


「フェーイ?」

「ひ、やぁっ…!!あ、ぁああっ!!」


つい、いじめてやりたくなる瞬間

弱点を知り尽くした身体の一番弱い場所
強すぎる快感が苦手らしく、達した後はくたりと力が抜けきっている


「いい反応だったな」

「…っ誰のせい、ですかぁ…はぁ」

「俺だろう?他に誰が居るんだ」


分かっているなら、少し控えて下さい
確かに私が「食べて下さい」とは言いましたけど、それでも加減はして欲しいです

最近は味見の回数も増えてきましたし


「着実に俺好みになってきたな」


アースさんは嬉しそうに私の身体は触っていて、言うだけ無駄な気がしてきました





(よし、続きは部屋でするか)

(え…?まだ、味見するんですか?)

(他に何をするんだ?)

(………もう、休みたいです)



2011/01/17

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