仕立屋工房隠し部屋

□渇くでも、満たされるでもなく
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組み敷いた細く幼い身体

二人分の重みにベッドが軋む


「…っあ、アースさん…?」


絞り出すように紡がれた彼の名前
突然の事に驚きはするが、拒絶はしない
したところで何も変わらない
ただ酷い目に遭うだけだということを、彼女は身を持って知っているから


「…アースさん」


何でもないように振る舞う

普段と変わらずに微笑む


声は震え、身体も強張っているのに


「……フェイ…っ!」

「っ…あ、……っふ、…んんっ!!」


名前を呼ぶと同時に触れる唇


荒々しく、噛みつくように

呼吸さえ許さないように、深く長く


「…ぁ……はっ、はぁ…」


呼吸の整わない彼女に構わず、噛みつくようなキスを繰り返しながら服を脱がせた

白い肌が露出されてゆく


何の跡もない、新雪のような白い肌


「いっ!!た、…ぃ…っ!」


彼女が痛みに声を上げる

赤い痕を残すほど、肩に噛み付かれて


真っ白な肌、赤い痕がひとつ


「………アースさん」


彼女が俺の名前を紡ぐ

ゆっくりと閉じられた瞳



それが、始まりの合図となった





「っや!あ、ゃあああー――…っ!!」

「っ!!…く、はっ」


激しい攻め立てに耐えきれなくなった彼女は悲鳴のような声を上げ、背を反らし、細い首筋を晒して果てた

そのままシーツに深く沈む身体の最奥、そこに何度目かの白濁とした想いを放つ


これで何度、彼女は果てたのだろうか

これで何度、彼女は意識を手放したのか


「っあ…!?…ゃ、…ぅそ……まだ…?」


その度に激しく突き上げ、無理矢理起こす

その度に悲願する彼女の声はそれまでの行為で渇れ、無理に絞り出してるようだった


「あぁ、………まだ足りない、な」

「ぃー――…っああ!!!」


俺も、後の事は殆ど覚えていない


ただ全てを本能に任せていた

腕を動かす事も出来ない彼女の身体を何度も突き上げて、声を出せない彼女がそれでも上げようとする声に成らなかった音を聞きながら、彼女の中に収まりきらない量の想いを何度も放ち、奥まで流し込んだ


「ー――――…ッ!!!」


その行為の最後の最後で声に成らない声を上げた彼女は、虚ろな瞳で俺を見ながら、それでもどこか優しげな微笑みを浮かべ、またそっと静かに意識を手放した


「……っ…はぁ…」


ひとつ息を吐き、力無くシーツに沈むフェイに手を伸ばす


頬に残る涙の跡を拭って、ゆっくりと意識のない身体に手を滑らせた
細く、それでいてなだらかで柔らかい肌


その白い肌に付けた、無数に散る赤い跡を確かめるように



まだまだ足りない


否、いくつ付けても足りないんだ


「……フェイ」


また、ひとつ


白を彩る、鮮やかな赤い華を散らす



しっかりと彼女を抱きしめて、眠りついた


決して彼女を離して終わないように


彼女が、離れて行かないように



沈む意識の中で、ただそれだけを思った



2010/09/25

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