短編&中編
□無知は時に残酷で
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「怖がらなくていいよ」
『・・・』
「って言っても、無理か・・・」
コンコン
「失礼します」
「あ、正チャン」
「会議の時間です」
「うん、わかってる」
僕は彼女のほうを向き、微笑んだ。
「ちょっと行ってくるね」
彼女はこちらを見ようともしなかった。
僕らは部屋を出て、会議室へと向かう。
先に口を開いたのは正チャンだった。
「手錠とかつけないんですか?」
「え、なんで?」
「逃げ出す可能性も・・・」
「それはないよ、正チャン」
「?」
「彼女には帰るところがないんだから」
「まぁ、そうですけど」
彼女に帰るところなんかないよ。
だって僕が一族もろとも滅ぼしちゃったんだから。
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