UnderTale

□お前に触れる
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あれから数時間──
心持ちげっそりとしたサンズの手には、青色に輝く自身のソウルが戻ってきていた


(あぁもう、本当に焦る・・・
 人の気も知らないで好き勝手弄びやがって畜生
 無邪気にやってるから何も言えねぇんだよ、天使かくそっ)


散々いいように触られたサンズ。決して乱暴にはされず、むしろ逆に優しすぎる触りかたをされて、何度その身体を押し倒しかけたやら
アリアルからすれば、傷付けないように気を使って、優しく触れていだけなのだが
サンズにとっては、煽っているようにしか感じれなかったようだ


(クッ・・・パピルスさえいなければ、今すぐにでも俺の部屋に連れ込んでベッドインしてやるのに・・・っ)


などと考えている始末。幸か不幸か、サンズのソウルにご満悦になったアリアルに、その姿は見えていなかった
サンズは、返還されたソウルを自身の胸に押し当てた。未だ興奮冷めやらぬところがあるが、何とか落ち着かせたようだ

サンズの胸元に、吸い込まれるように消えるソウルを不思議そうに見つめながら、アリアルは、心臓のある左胸に手を当てる
だが、魔力をまだ上手く操作できないアリアルでは、自身のソウルを具現化させることは難しいようで
必死に力を込めてみるものの、ソウルが具現化する様子は一切なかった


「?アリアル、何してるんだ?」
「ん、私のソウルも取り出せるのかなって思って
 でも、中々できないね」
「最近魔力の使い方を覚えたばかりだろう、そりゃすぐにはできないさ」
「むむむ・・・悔しい」
「Heh heh、何ならオイラが手伝ってやろうか?」
「え、手伝う?どうやって?」


キョトンとしながらアリアルがサンズを見つめる。キラキラ光るトパーズの目を直視したサンズは、反射的に鼻を抑えた(眩しいぜ・・・)
思ってたよりも、アリアルからの期待の眼差しが、サンズのソウルにグサグサと刺さっているようだ
疚しい気持ちがあって言った訳ではない(一切ないわけでもない)が、こうも純粋な目を向けられると、相手の身体に触れるというのに若干の戸惑いが生まれる

それでも、最終的にやるのがサンズなのだが


「あー・・・ちょっと身体に触れるんだが、いいか?」
「え?あ、う、うん、大丈夫だよ」
「OK、ちとばかし違和感があるかもしれないが、じっとしててくれよ」


言うが早いか、サンズの左手がアリアルの左胸にそっと触れる。事前に言われてはいたものの、反射的にビクリとアリアルの身体が跳ねた
それに気づいていたサンズだが、あえて気付いていないフリをした。でなければ自分まで意識して、恥ずかしくなってしまうのが目に見えていたからだ

サンズの左目に、青い光が灯る。左手から流れる魔力は、彼の手を伝ってアリアルの体へ流れ込んだ
無意識の働きで、アリアルの体がゾワリと粟立つ

他者の魔力を体に受け入れるというのは、人間で言えば、他人の血液を受け入れることと、似たようなものだ
自分のものではない魔力が、身体中を駆け巡るのは、えも言えぬ感覚を身体に与える
モンスター同士でも、他人に魔力を流し込むという行為は、滅多に行われない
それは、ソウルから作り出される魔力を受け入れるためには、互いを信頼していなければいけないから、というもある。でなければ、相手の魔力の受け付けを本能が拒絶してしまうのだ


(何だろう、これ・・・凄いゾワゾワする)
「んっ・・・んん」
「おー、もう少しだから我慢してくれ(落ち着け、これはソウルを具現化しようとしてるだけだ)」


決して、決して疚しいことをしているわけではない。誰に言うわけでもない言い訳を、サンズは内心で繰り返した
魔力が巡る感覚に、悩ましそうな表情をするアリアル。不覚にもそれが"行為"を思い起こさせたのか、サンズの視線がサッと横に反らされるのに、時間はかからなかった

やがて、巡る魔力がアリアルの身体(器)からソウルを取り出す
ピンクに近い赤色をした、ハートの形のソウル。淡い輝きを放つそれは、フワリと、音もなくアリアルの両手に収まった


「綺麗な色だな、お前さんのソウルは」


ボーッと自身のソウルを見つめるアリアルの後ろから、同じくジーっとソウルを見つめるサンズが、思わずと言った風に呟いた

ニンゲンのソウルには、現時点では「七色」であることが発見されている
それぞれ特色のあるものだが、中でもアリアルの色のソウルは特殊であるとされ、珍しいものだ
「決意」の意を持つ、赤色のソウル
まるでアリアル自身のようだと、フッとサンズは笑った
そんなサンズの目の前へ、ズイっと差し出されるソウル。突然のことに目を白黒させながら、恥ずかしそうにして、ソウルを差し出してくるアリアルへ声をかけた


「お、おうアリアル、お前さんこれはどういうつもりだい?」
「ど、どうって・・・なんか、その・・・凄く触りたそうにしてたから・・・」

(・・・ん?何でオイラの手元を見て・・・)


アリアルの視線が、自身の手元に向いてるのに気付いたサンズは、同じように自身の手元を見つめる
と、そこには、無意識に両手を広げている、紛れもない自身の手が。心なしかワキワキと動いているのは気のせい・・・
ではなかった


(・・・おい、おおおおい待て待て俺の手!!)


素直すぎんだろ!!
声にならない声を叫びながら、サンズの顔に冷や汗がドッと流れ出る
スケルトンなのに、こんなに汗が出るものなのか。と、どこか冷静な自分自身がいるのを感じながら、目をグルグルと回す
心の準備もなにもないまま、フワリとアリアルのソウルが、サンズの手に渡された
歓喜と戸惑いで声にならない悲鳴が、口から飛び出ないように必死で抑えながら(必死になりすぎて吐血しかけてる)渡されたソウルと、恥ずかしそうにこちらを見るアリアルとを見比べた
若干、上目遣い気味のアリアルを見たサンズのHPは、既に0に近い。口の端から赤い液体がタラリと流れた(注:ケチャップではありません)


「・・・暖かいな、お前のソウル」


トクリトクリと脈打つ、両手の平に収まる程の大きさしかないソウル。アリアルが恥ずかしげにしているせいか、その脈は少し早い
ふにっと少し触れてみれば、ピクリと、それに合わせてアリアルの身体が跳ねた


(Ahー、こりゃやばいな
 そんな反応されると、すげぇ苛めたくなっちまう)


優しく撫でれば、気持ち良さそうに目が細められる
触れるか触れないか、ギリギリのラインで撫でれば、少しもどかしそうな、もっと触れてほしいとでも言うような表情をして、フイッと顔が反らされる
ぷにぷにと優しくつついてみると、今度はくすぐったそうな表情をして、肩をピクッと震わせた
少し触れる度に、恥ずかしそうに、嬉しそうに反応するアリアル。その姿を見たサンズの悪戯心が、むくむくと刺激されていった
好きな子程苛めたくなる、というやつだ


「な、なんか変な感じするっ」
「んん?オイラは普通に触ってるだけなんだがなぁ」
「あっ、ちょ、」


ぷるぷると震えて焦る##NANE1##をよそに、段々サンズは、その反応が楽しくなっていた
これは・・・##NANE1##がソウルに夢中になるのも、わかる気がする


「さぁーて、次はオイラの番だ」


さっきの仕返し、させてもらうぞ。ニヤリと笑ったサンズに対して、頬を染めたアリアルは「あ、もしかして今ピンチ?」と、ようやく自分の現状を把握した

その後、アリアルの悲鳴は、アンダインとアルフィーが遊びに来るまで続いたとか



お前に触れる
(「ちょ、まっ!あははははははは!!」)(「そーれこちょこちょこちょ」)

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