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□愛情バロメーター2
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「…えぐっ…」
いきなりえぐえぐ泣きだす僕に驚いて目を覚ます伊継。
伊継、寝癖が酷いよ
なんて今は言えないけど。
「どうした?智晶」
「…夢、見た…、い、伊継が居なくなっちゃう…、ゃ…、ゃだ、やだよう…」
途切れ途切れにしゃくりを入れながら泣く僕を優しく引き寄せ、頭を熱を帯びた手が包んだ。
「大丈夫だよ、絶対いなくならない。」
「やだぁ…、うそ、ぅそ…、絶対なんて無いもん…」
僕が恐怖を口にする度、
伊継の抱擁は強くなった。
「伊継伊継伊継伊継伊継伊継伊継…行かないでね、一人にしないでね…」
ボキ
鈍い音が鳴った。
僕の骨が鳴った。
折れた訳じゃない。
最近めっきり動いてないから。
もっと強く抱きしめていいよ。
僕の骨が砕けるまで。
*--*
荒い息を整えながら
虚ろな目で窓を見た。
月の明かりが窓から差し込むのに気づいた。
明るさに目を向けると今夜は満月だと分かった。
「智晶、智晶」
愛しい恋人が名前を呼ぶ。僕に覆い被さるようにまた上から抱きつかれた。
伊継の濃い匂いが、体そのものの自然の香が僕の鼻孔を擽った。
伊継の香りは僕のお守り。
「智晶、孕んでよ。
いっぱい子どもつくろう、智晶と俺の子ども、いっぱい作ろ。」
伊継の口許は笑っていたが目は真剣そのものだった。
「……うん、…孕みたい、孕みたい、伊継の子どもほしぃ、伊継と僕の子ども欲しいよ…」
僕と同じ考えの恋人に安心し、頬に温かい雫がスッ―と流れていった。
あと10ヶ月したら楽しみだね、僕たちの子ども産まれるかも。
恋人の優しい言葉に僕は充たされた。