6927
□びたーちょこれーと
1ページ/1ページ
骸が何かを食べていた。
「何食べてんの?骸が間食してるのってなんか珍しい」
彼は袋をひょい、と持ち上げた。
そこにはチョコレートと書いてあって、
なにやら大きく『99%』と書いてある。
「何?99%って」
骸は案の定やれやれという顔をして、
唇についてたチョコレートを舌で舐め取る。
「99%というのは、カカオの割合のことです」
「へー。なんか苦そうだね」
「苦いですよ、とても」
「苦いチョコわざわざ食べてんの?」
「…悪いですか?」
「別に、悪くない」
…少し、沈黙が流れた。
というか、骸はそのままチョコを食べ続けてる。
「綱吉君」
骸の声で我に返った。
「これ、食べたいですか?」
『食べたいんでしょう?』というニュアンスを含ませて言う。
別に食べたくはなかったけど、骸がそう言うなら。
「じゃ、食べたい」
骸はおもむろにチョコレートを縦長に折った。
「そんなに長くなくっていいよ。むしろ1ブロックぐらいでいい」
「クフフ…」
骸はそのまま縦長に折ったチョコの端っこを口にくわえた。
「…骸、それ俺のじゃないの?」
「綱吉君のですよ、」
くわえてないほうの端っこを突き出してくる。
それって、つまりこの端っこをくわえろってこと?
「……やだっ」
「何故ですか?」
「そんなラブラブな恋人みたいなの…やだよ」
「僕達、ラブラブの恋人じゃないんですか?そんなこと言ってる間に僕がくわえてるところ溶けてきてますよ?このままだと、どんどん短くなっちゃいますよ?」
そういって、骸にしては珍しい上目づかいでこっちを見てくる。
「………」
それでも黙ってる俺を見て、口の端でニヤリと笑う。
「恥ずかしいんですか?」
恥ずかしいに決まってる。
そんな、ポッキーゲームみたいなの。
「しょーがないですねぇ…」
全然しょうがなくなさそうにチョコをくわえたまま俺に近づいてきた。
俺を壁際に追いやり、顔の横の壁に手をついた。
顔が、異常に近い。
「ちょっ、何して……」
「目、つぶってください」
「は?」
「恥ずかしいんですよね?それなら僕がくわえさせてあげますよ」
にっこりと、笑ってはいるけれども。
「こわ…」
「何か言いましたか?早く目閉じて口あけて」
「うー……」
後が怖いのと、心臓がうるさくてしかたがないから、大人しく目を閉じて口をあけた。
ちょっとして、顔の超近くに骸の気配。
「はい、口閉じて」
はむ、と唇が何かをはさんだ。
ぽきっ
口の中にカタマリがはいってくる。
「……苦い」
「でしょう」
顔をしかめたら、骸の声が間近で聞こえて、ちゅっとキスされた。
別にキスされたからってカカオ99%のチョコが突然甘くなったりはしないけど。
それでも、俺にチョコの苦さを忘れさせるには十二分の効果があった。
顔、見られたくなくて
(だって真っ赤なんだ)
「おいしい」
って言ったら、
何を思ったのか骸は嬉しそうにクフフ、と笑った。
カカオ99%、癖にはなりそうにないけど。
また骸が食べてたら
一緒に食べてやってもいいかな。
▼END