03/06の日記

20:01
音嶺(うたぷり)
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※やりたい盛りの肉食系音也君と振り回される寿先輩
※音トキ表現有






「一人でするのが虚しい?」


お茶を啜りながら、嶺二は首を傾げた。
音也から相談があるとリビングに呼び出され、座ってみれば音也は至極真面目な表情。
どんな話を切り出されるのかと思ったらこれだ。

「アハハ。やっだー!音やんてば、それ…下ネタ?」
「下ネタなんかじゃないよ!真面目な話!」
「真面目な……オナニーの話?」
「うん」

そうかぁと笑ってまたお茶をすすった後、嶺二はやっと困惑した。

「…いやぁ、音やん。オナニーというものは元々一人でするものであって…」
「それはわかってるよ!そういうことじゃなくってさぁ、ホントは柔らくって甘い匂いのする女の子としたいんだよ。でも俺アイドルだから難しいじゃん?だから一人でするしかないんだけど、最近それがすっげぇ虚しいって話!」
「あ、あぁ!」

やっと理解できた。いきなり切り出してくるから理解するまで随分時間がかかってしまった。
つまりは、女の子とえっちしたいという話か。

確かに、まだデビューしたての若者には辛かろう。今が一番やりたい盛りだろうし。
男の子あるあるだよね☆と嶺ニは一人頷いた。
しかしまぁ、正直そんな相談をされても困るだけだったのだが。

「ん〜〜〜。じゃあよーっし!この嶺二おにいさんが手伝ってあげよーう!」

なーんてね☆
と決めポーズをするまでが、とりあえずこの場を濁すための嶺二のギャグのはずだった。

「なーんて…
「ホントにっ!?」

音也が瞳を輝かせ、台詞の途中に食い気味に顔を寄せて来たりしなければ。

「ちょっ、音やん…!」
「ホントに!?嶺ちゃんが何かしてくれんのっ!?」
「いやっ、何かって何だろうね!?ていうかちょっと顔近い近いよおとやんっ!」

顔近いどころか、鼻息がすっごい荒い。しかも瞳のキラキラが眩しい。目が潰れる。
これは明らかに期待しまくりの興奮状態だ。
明らかに飢えすぎ状態の音也に、嶺二は既に後悔し始めていた。

「ね、じゃあオレ下脱いでいい?」
「何でっ!?ダメだよ!って、キャー!」

まるで女子のような甲高い声が出てしまった。
制止も聞かず、いきなり目の前の音也が脱ぎだしたんだから仕方ない。
話が急展開すぎる!というかいくらなんでも突っ走りすぎだろうこれは。

「ちょっとちょっとおおお!もっと恥じらいを持ってよ音やん!そんなんじゃいつか逮捕されるよ!」
「逮捕なんてされないよ〜」

アハハ、と爽やかに笑いながら下半身を露出している音也にぐっと手首を掴まれる。
逃がす気などさらさらない、強い力で。

「ね、触ってくれる?嶺ちゃん」
「え!?」

掴まれた手首が導かれたのは、もちろん音也の股間であった。
しかも何故か、既に半分勃っている状態のそこ。

「な、なんでちょっとたってんのさ音やん…」
「俺にもわかんないよ。でも嶺ちゃんの視線を感じると何かむずむずして…あ」
「キャアアアー!」

嶺ニは叫んだ。また女子のような声を出して叫んでしまった。
音也がついに、完全に勃ったのだ。この短い間にそれは雄雄しく。
たったー!音也がたったー!
気分はまさしくハイジその人であった。

「お願い嶺ちゃん…触って?」
「う…ぐ」

そんな切羽詰まった声を耳元で出さないで欲しい。
そんな縋る様な目で見つめないで欲しい。
逃げる術を見失ってしまうから。

「わ、わかったよっ!このマスタークラスかつ芸歴うん十年!頼れる先輩寿嶺ニに全部任せておけえええい!」

もう自棄だった。
ヤケクソだった。
これも先輩の大切な役目!そう思い込むしかなかった。




「アハ。結構逞しいんだね、おとやんてば…」
「ん…それって、褒めてる?」
「うん…まぁ…そうなる、の、かな?」

一体どうして、こんな体勢になった。
ハハハと乾いた笑いを浮かべながら、嶺ニは今ソファーに腰掛ける音也の足の間にしゃがんで、その逞しい昂ぶりを目の前にしている。
完全に昂ぶった音也のものは、冗談ではなく嶺ニの想像以上に雄雄しくそそり立っている。

(とはいえ、僕も男を相手にした経験はないんだよね…)

とりあえず、適当に扱いておけばいいだろう。
自分がされたら気持ちいいように、適当に。
心を落ち着かす様に息を吐いてから、目の前の昂ぶりの先端にそっと触れてみる。
他の男のものに触れたのは初めてだが、意外と嫌悪感はない。

「嶺ちゃんの指、冷たくてきもちい」
「ハハ、僕が冷たいというより音やんのが熱いんじゃ…」

そのまま先端をクニクニと親指で押しながら、軽く茎を握って扱いてみる。
上下にゆっくりと。
やっぱり、変な感じがした。

「あ…っ、はぁ…」

それだけだというのに、音也の唇から漏れる妙に甘い声。
頬は微かに上気して、息は乱れている。
そんな音也を見上げて、嶺二ははっとした。

(これは、子に性の手ほどきをする親の感覚…!)

そうだ。これだ!
そう考えればやましいことなんて何ひとつないじゃないか!
実際指導している後輩な訳だし。

「どうかな音やーん、いい感じー?」
「うん…いい…」
「はは、そっかぁ〜そりゃよかったぁ〜」

深く考えないように、いつもの調子で。
そう思ってはいるものの、少しずつ湿り気を帯びてくる先端と確実に感じている表情の音也に焦りを隠しきれない。
かと言ってここで止めるのも気まずいし。

「うー…あっ、れいちゃ…あ」
「ちょっとおとやん!変な声だしちゃダメ!」
「だ、だってきもちいーんだもん!」

こんなやりとりをしながら、手の中はすでに先走りでびちょびちょになっている。
こんなに濡れるものだっただろうか。そんなに気持ちいいんだろうか。このままイくんだろうか。イかせた後、どんな表情すればいいんだろうか。
音也のものをくちゅくちゅと扱きながら、様々な思考が嶺ニの脳内をグルグル回る。

「ねぇれーちゃん…」

そんな嶺ニを止めたのは、やっぱり音也だった。
何かをねだるような甘い声に、何故か、手首をぎゅっと握られて動きまで止められる。
瞳は熱にすっかり溶けて、とろんと揺らいだ視線で見つめられる。
嶺ニは、非常に嫌な予感に焦がされていた。


「俺、嶺ちゃんが女の子に見えてきた」


そしてその嫌な予感は、もちろん的中してしまうのである。

「は、ああああああっ!?」
「嶺ちゃん髪長いし顔可愛いし肌綺麗だし…」
「ちょちょちょ何言い出すのおとやんっ!」

ぞわわっと全身を悪寒が駆け抜けていく。
伸ばされた熱い手のひらで、そろりと頬を撫でられた。
トドメは、品定めを終えたような音也の舌なめずり。
ベロリ、いやじゅるりと音を立てて。

(お、襲われる…!)

目の前にいるのは、同性のしかも後輩だというのに。
嶺ニは身の危険、いや貞操の危機を感じていた。。

「ね…嶺ちゃん、しよ?」
「何をおおおおっ!?」

慌てて四つん這いのまま逃げようとした腰を後ろから掴まれて、圧し掛かられる。
音也の荒い呼吸を首筋に感じて、尻に強く押し付けられる熱い昂ぶり。
これはまさしく絶対絶命。気分はもう、捕まってしまった草食動物。
食べられる!普通にそう思った。

「ちょ、だ、誰かあああああっ!」
「……何してるんです」

死に物狂いで腕を伸ばした先。
そこにいたのは、まるで汚いゴミでも見ているかのような冷たい目をしたトキヤの姿だった。
神か。救世主か。いや、後輩だ。

「トトトトトッキーいいい!いいところに!おおお助ぇっ!」
「だから、何してるんですと聞いているんです。……音也」

トキヤの登場で音也の力が一瞬怯んだ気がする。
嶺ニはその隙を見逃さす、すかさず音也のホールド解き払ってトキヤの後ろに逃げ隠れた。
トキヤの冷たい視線が、静かに音也に注がれている。

「もー。そんな怒った顔しなくてもいいじゃんトキヤ!俺はただ嶺ちゃんが手伝ってくれるっていうから」
「それで、また襲おうとしたんですか?…私の時みたいに」
「へっ!?」

トキヤの思わぬ発言に嶺ニが目を丸める。
トキヤは大きな溜息を吐いた後、嶺ニに視線を向けた。

「いいですか寿先輩。相談からの襲撃、これは音也の常套手段なんです」
「じょ、常套手段って…」
「この男を普通と思ってはいけません。この男は、ケダモノです」

トキヤの言葉に、音也が頬を膨らます。

「ひっでートキヤ!そんなオレを動物みたいに!」
「動物じゃありません。ケダモノです」
「ひっでー!」

トキヤの冷たい視線も、嶺ニの青褪めた表情も諸共せず。
音也はまたアイドルらしい爽やかな満面の笑みを作り、そんな二人に言い放った。

「俺はただ、トキヤも嶺ちゃんも女の子みたいに可愛くて大好きって思ってるだけだよ!」

だからしたいって思うのは当然でしょ?
全く悪びれることもなく、逆に何が悪いのかと問うてくるような姿勢。
厭らしさも下心も全く感じさせない爽やかスマイルを添えて。
トキヤは再び盛大な溜息を吐いて額を押さえ、嶺ニはそんな音也を見て確信した。

(この後輩、大物だ!)

ああ、なんて末恐ろしい。



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