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□三人はアイドル!
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「三人は今、本当に大人気だねぇ。まさに国民的アイドルってやつなんじゃない?」

今テレビで流れているのは、旬の歌手達の集まる音楽番組。
夜のゴールデンタイムに一番視聴率を取るその番組で、今マイクを持って画面を独り占めにしているのは、3人の少年達だ。
彼らは司会の男が言うように、まさしく今一番世間の注目を集めている3人組のアイドルグループだった。

「いえ、そんなことないです!僕達なんてまだまだですよ!」
「ハハハ、ディーノ君はいつも爽やかだね!」

爽やかな笑顔に白い歯を覗かせ、ハキハキとした口調で返事を返したのは、この3人のグループのリーダー的存在であるディーノだった。
輝くような金髪が眩しくどんな時でも爽やかさを崩すことのないディーノは、その一際整った顔立ちの効果もあり、老若男女問わずに人気を持ち好感度もbP。
CMにも多数起用されて今やディーノをテレビで見ない日はない程で、業界からも最も注目されているまさしく一番旬なアイドルだった。

「白蘭君は?最近休みなくて大変でしょ?」
「ホント大変ですよ。事務所ぶっ壊しちゃおっかな♪って思っちゃう位」
「おい何言ってんだ白蘭!」
「ハハハ、白蘭君は相変わらず歯に衣着せずで面白いね!」

焦るディーノの左隣で、ディーノとは明らかに違う種類の笑みを浮かべて微笑んでいるのは、三人の中で最年長の白蘭。(と言っても16歳だが)
その涼しげな顔立ちと何を考えているのか解らない飄々さで、コアなファンの心をガッチリと掴んでいる。
白蘭はとにかく頭の回転が早く何をやらせても器用で、その誰にも気負わない傲慢さも逆に受けて、今ではバラエティーからコメンテーターまで、アイドルという枠を越えてひっぱりダコ状態だった。

「炎真君は?最近どうかな?」
「……。」
「ほらエンマ!聞かれたらちゃんと応えろって!」
「別に、普通…です」
「ハハハ!炎真君は本当にいつも寡黙だね!演技してる時とは大違いだ!」

それでもまだ無表情で口を開かぬ、ディーノの右隣に座る赤毛の少年は、最年少14歳の炎真だ。
炎真は歌って踊る際も無表情で、こういう番組に出ても滅多に喋ることはない。
けれどその漂う影が年上の女性の母性本能をくすぐるらしい。炎真のファンはほぼ年上の女性達だった。
そして普段はそんな様子でも、演技力は3人の中でもピカ一で、舞台やドラマではまるで別人のようにどんな役でもこなした。
この前出た映画で日本の映画賞も受賞し、今後ますます俳優としての道を期待されている。

「三人は本当に個性があって面白いね。たまに合う休みの日も、なんと三人一緒に過ごしてるんだって?」
「そうなんですよ。ハハ、何か気持ち悪いですよね」

ディーノは苦笑しながら答えたが、会場は観客達の黄色い声援で包まれた。

「そんなことないよ!グループで仲がいいなんてすばらしいじゃないか!」

三人の人気は、このグループの仲の良さにもある。
最近は忙しくて個別活動も多い3人だが、休みが合うと必ず3人で過ごしているというのはファンなら周知の事実なのだ。

「しかも一緒に住んでるんですけどね」

ディーノの苦笑と、黄色い歓声は続く。
しかもこの三人、本当に一緒に住んでいた。

「そうそう、この前も久しぶりに連休があって、温泉に行ってきたんだよね♪」
「温泉!三人だけで?」
「いや、マネージャーも一緒だったんで実際は男4人ですね」
「男4人で温泉!ハハハ、何だかすごいねぇ」
「…でも、楽しかった」

炎真が珍しく自分から発言した上に笑ったりするものだから、会場がざわついた。
けれどディーノと白蘭も余程その旅行が楽しかったのか、三人で楽しげにニコニコと笑みを浮かべ始め、会場のざわめきは再び大きな黄色い歓声に変わったのだった。

「それじゃあそんな仲の良い三人に歌ってもらいましょう!今週のオリコン1位!曲は〜……

三人がステージに移動し、それぞれのポーズを取って立ち、曲が始まる。
ディーノのダンスに、白蘭の歌、炎真のコーラス。
ステージングでも見事に3人それぞれの見せ場を作って完璧に仕上げて、会場は大盛り上がり。視聴率も上々。
3人は今日も完璧なアイドルとして、笑顔に手を振りながら番組を終えたのだった。
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