お題

□だって甘い方がいいでしょ?
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「なまえ、ホワイトデーのお返しは何がいい?」


そう笑顔で聞いてきた吉久さんに首を振って答える。


「や、いらない」

「どうして!?」

「だって…バレンタイン何もあげてないし」

「くれたじゃないか!」

「えー…あんなのあげたって言える…?」

「嬉しかったのに…」


吉久さんは何もいらないと言ったけれど、あまりに残念そうな顔をするから形だけでもとコンビニで簡易包装されたチョコをあげた。

もちろんその前日に言った言葉を彼が忘れるはずもないから、キスもそれ以上も差し出すはめになったけれど。

でもそれは、なんと言うか…いつものことだし?
恋人としてのプレゼントとするには申し訳なく感じてしまう。


「だって、本当になにもしてないもん…」

「それがよかったんだって!」

「……どれが?」

「いつもよりも俺の言うことを素直に聞いてくれる感じ?」


なんだそれ!なんだそれ!!
そんな気は全くなかった、はず。


「そんなだった…?」

「いつも以上に可愛かったぞ、なまえ」

「もういいです…」


は、恥ずかしい…。
申し訳ない気持ちが変な方向に出てしまったらしい。
まぁでも喜んでもらえたならいいか…無意識だったけど。


「そうだ、なまえもそうする?」

「なにが?」

「なんでもなまえの言うこと聞く」

「は、」

「なまえの言ったことしかしない」

「えぇー…」


そう言って顔を近付けて来た吉久さん。
唇が触れるか、というところでピタリと止まる。


「………」

「………」

「……どうして欲しい?」

「え、もう始まってるの?」


まだ答えていないのに。
しかもこれってどっちがプレゼントなんだか…。
でもこんな距離で見つめられたら降参するのも時間の問題。


この先の甘さを知っているから。




だって甘い方がいいでしょ?




「キス、して下さい」








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