お題

□好きすぎて窒息
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部屋のチャイムが突然鳴った。

こんな時間に誰だろう。

でも心のどこかであの人じゃないかと期待している。


「こんばんは」

「こんばんは、哲さん」


期待していた人が目の前に現れた時のこの嬉しさを表現するにはどうしたらいいんだろう。


「いつも遅くにごめんね」

「全然!今日はどうしたんですか?」

「なまえさんに渡すものがあって」


私の部屋の哲さんの定位置に座ってから、鞄からは可愛らしくラッピングされた包みが出てきた。


「ホワイトデーだからね」

「え!……いいんですか?」


結局、バレンタインには作り直したクッキーを渡した。
成功した……と胸を張って言えない出来のものだけど。
それでも哲さんは「おいしいよ」と笑って、失敗したものも全部食べてくれたのだ。

そんなので、さらにお返しをもらうなんて……。


「なまえさんの為に用意したんだから、もらってくれないと困るな」

「う……えと、じゃあ…ありがたくいただきます」


そうして受け取った包みからは、ふんわりと甘い香り。


「開けてもいいですか?」


笑顔で頷く哲さんを確認し、リボンを解く。


「これ……もしかして、手作りですか?」

「うん、なかなか上手く出来たと思うんだけど…」

「すごい…!」


中に入っていたのは見た目も完璧なカップケーキ。
あんなクッキーしか作れない私は、ますます立場がなくなってしまうけれど。


「なまえさんがクッキーを焼いてくれたからね」

「でも失敗したのばかりだったから…」

「僕の為に作ってくれたことに意味があるんだよ」


だから僕もなまえさんの為に作ったんだ、と言う哲さん。
嬉しくて嬉しすぎて泣いてしまった私を優しく抱き締めてくれた。

もうこれ以上好きになれないくらい、好きだと思ってたのに。

哲さんを好きになる気持ちに、限度がないことがわかった。



好きすぎて窒息







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