お題

□君の隣は予約済み
1ページ/1ページ


佐々木編集長にまさかの逆チョコを貰ってから一ヶ月。

私はまた悩んでいた。

一応ホワイトデーのお返しの準備はしたけれど。
調子に乗って渡してもいいものか。

そして、考え事をしていると仕事が手につかなくなるのは、私の悪い癖だというのはわかっている。


「みょうじくん」

「……吉田さん」

「頼んでた資料出来てる?」

「うーん、なんと言えばいいんでしょうか…えーと、つまりですね」

「出来てないんだろ?」

「……はい、すみません」

「またか…いい加減にしてもらいたいんだけど」

「すすすみません……」


そしてまた勝手に引き出しを開けて、編集長のために用意した物を持たされ、背中を押された。

あれ、なにこれ。
この感じ私ちょっと知ってる気がする。

振り返ると吉田さんがまだ睨んでいたので、仕方なく編集長の元へ向かう。


「へ、編集長…」

「ん、なんだ?」

「あの、あの、これ…」


おそるおそる渡したバレンタインのお返し。
お菓子の渡し合いばかりもどうかと思ったので、今回はハンカチにした。
めずらしくにこりと笑ってくれたから迷惑ではなかった、と思いたい。


「みょうじ」

「はいっ」

「これ」


渡されたものはどう見てもホワイトデー用の包装紙で包まれた箱。


「え、これ?だって…」

「私もバレンタインに受け取ったからな」

「あ…ありがとうございます」

「ちゃんと三倍返しにしたぞ」


それは中身がすごく気になるけど、それは後で確かめることにしよう。


「わ、私も!三倍返しです!」

「…ほう」

「気持ち、の大きさですけど…」

「なるほど」


では楽しみにしていよう、との言葉に顔を見れずペコリと会釈をしてデスクに戻る。

私の気持ちが書かれたメッセージカードを見たら、編集長はどうするだろう。
考えていたら思わずため息が出てしまい、吉田さんにまた睨まれた。



君の隣は予約済み




編集長から貰ったプレゼントの中に、私と同じ気持ちが綴られたカードが入っていることを知るのは家に帰ってから。








[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ