お題

□ねぇ、これあげようか
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「ねぇ、明日って何か準備してる?」


いつものように吉久さんの部屋に行き、二人並んでソファに座って。
テレビを見ていたら唐突に言われた言葉。


「何か…ってなに?」

「またそんなこと言って」

「いや、全然わからないんだけど…」

「…え?本気?」


本気も何もなんで突然何かを要求されたのか意味がわからない。

明日何かあったっけ?
うーん、と考え込んでいると隣から聞こえるため息。


「イベント事に興味なさそうだから聞いてみたんだけど」

「はぁ……?」

「明日、2月14日」

「……あ!チョコの日!」


そうだ!やたらとテレビや街中でチョコを見掛けると思ってた。


「チョコの日……まぁそうだけどさ…」

「え、どうしたの!?」


がっくりとうなだれてしまった吉久さんに驚く。
一体どうしたと言うんだろう。


「その様子じゃ何も用意してないんだろ?バレンタイン」

「あぁ…バレンタイン…」


吉久さんと私では歳が10以上離れている。
それでも彼は私よりもこういうイベントに敏感なのだ。


「ごめんなさい、でも明日までに準備するから…」

「いや、いいよ…何となくわかってた」


とは言うけれど、そうあからさまに落ち込まれてしまうといたたまれない。

あぁ、そんな寂しそうに笑わないで…。


「あの、やっぱり何か…」

「何かって?」

「えと、えっと…あ!マッサージとか?」

「………」


ダメだ!!今さら何を言ってもダメだ!!

頭を抱えた私の髪を撫でる吉久さん。


「なまえがいてくれればいいよ」


ほら、またそんなことを言うから。


「…ちゅー、しましょうか?」


私だってそう言うしかなくなる。

明日はチョコより甘いキスをあげる。



ねぇ、これあげようか





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