お題
□いつだって、好きです
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いつも週末は幸司さんのマンションにお邪魔している。
でも今日は同僚に「いつも断ってばかりなんだからたまには来なさい」と、半ば引き摺られる勢いで飲み会に拉致された。
その旨をメールすると『付き合いも大事だから気にせず行っておいで』と返事が。
じゃあせっかくだから楽しんでこようと思った。
飲み会が始まって暫くすると、イケメンと噂される佐藤くんが隣にやってきた。
「みょうじさんが来てくれると思わなかった」
「うん、たまにはね」
「俺、みょうじさんとゆっくり喋ってみたかったんだよねー」
そう言って爽やかに笑う佐藤くん。
結局飲み会が終わるまでずっと隣にいたけど、話も上手いし気も利くし、これならモテるだろうと納得のイケメンだった。
店の前で、もう一件!と騒ぐ同僚達をすり抜けて佐藤くんが再び近づいてくる。
「みょうじさん帰っちゃうの?」
「うん、ちょっと用があって…」
「そっか……あの、さ」
「うん?」
「その、…今度、二人で飲みに行かない?」
「ぇ、あ…え?」
実は前から気になってたんだ、と照れる姿もやっぱりイケメンだけれど、でも。
「ごめん、私お付き合いしてる人がいるから…」
「え!?あー…そっか…、そりゃ、そうだよな…」
「あ、でもまたみんなでとかなら…!」
「うん……」
イケメンがうなだれる姿に居たたまれなくなり「じゃあまた!」と逃げるように、駅に向かう。
どんなに佐藤くんが話が上手くて、気が利いて、誰もが認める完璧なイケメンだとしても。
話す度に、幸司さんならこう言うだろうな、こうするだろうなとばかり考えてしまっていた。
なんだか無性に会いたくなってしまい、幸司さんのマンションを目指して電車に乗った。
マンションの玄関前まで来てから、こんな時間に来て迷惑ではないだろうか、明日にすればよかったと思ったけれど。
意を決してインターホンを押し、待つこと数秒。
確認もせずにガチャリとドアが開く。
「なまえ?」
「……違ったらどうするんですか…」
「俺が間違えるはずないだろう」
笑顔で迎え入れてくれたことに安堵しつつ、「すみません、突然来てしまって」と小さく謝る。
そんな私を不思議そうに見る幸司さん。
「どうして謝るの?なまえはいつでもここに帰って来てくれていいのに」
やっぱり幸司さんは、いつでも私の欲しい言葉をくれる。
「もういっそここに住めば?」
真顔で言ってくるのがおかしくて、それでもやっぱり嬉しくて、思いっきり彼を抱き締めた。
いつだって、好きです
ひよこ屋