お題

□さりげなく愛されてる
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週末、時間の空いた私は久しぶりに尚さんの家にお邪魔していた。

金曜の夜は、先に合鍵で部屋に入り夕飯を作って待っていた。
何度か来ているとはいえ、やはりまだ家主のいない部屋に入るのは慣れない。

ソワソワしながら待っていると、尚さんは「遅い時間だからコンビニので悪いけど」そう言ってお土産にプリンを買って来てくれた。


昨日は、前日寝るのが遅かったから起きたのがお昼前。
ランチを外に食べに行き、そのまま街中をブラブラしながらたまにお店に入ったりして。

いつも、そういう歳じゃないからと外ではなかなか手をつないでくれない。
けれど、家の近くの人通りの少ない所でそっと手に触れたら、握り返してくれたのが嬉しかった。


そして今日。

夕方になりそろそろ帰る準備をしなければと思うけれど、つい名残惜しくてテレビを見ている尚さんの隣に座った。
すると、ちら、とこっちを見て私の腰に手を回してきたから、そのまま寄り添うようにもたれかかる。

二人の体温が混ざり合うのが心地よくて、気づいたら結構な時間が過ぎてしまっていた。


「尚さん、そろそろ帰ります」

「……そうか」


腰に回らせた手に力が入りさらに引き寄せられ「なまえ、」と呼ばれる。
顔を上げると途端に降ってくる口づけに抵抗なんて出来るはずもなく、受け入れる。

最後に、ちゅ、と音を立てて離れて行った唇を目で追うと、ぎゅうと抱き締められた。


「すまない、なんだか離れがたくてな…」


言葉に詰まってしまい、首を横に振ることしか出来なかったけれど、尚さんも同じように思っていてくれたことが幸せだと思った。



さりげなく愛されてる





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