お題
□初対面での大ゲンカ
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初めて雄二郎と逢ったのは大学の時の合コンで。
そりゃ私も友達にどうしてもと誘われて行ったからあんまり乗り気じゃなかった。
でもやっぱ行くからにはそれなりにオシャレをして、それなりに愛想よくしているのが私流の礼儀だと思っている。
それなのに目の前に座るこいつときたら…。
何が気に入らないのか知らないけど、来た時からずーっとむすっとした顔で、もちろんみんなの会話にも入ってこない。
さすがに私もそろそろ気まずいのでちょっと話し掛けてみた。
「あのー…」
「…………」
「ずっと話してないけど、大丈夫?」
「………なにが?」
「た、楽しんでる…?」
「………別に」
………お前はエ○カ様か!!!
イラっとしたけど、ますます雰囲気が悪くなりそうだから我慢我慢。
「えっと…、じゃあ何か飲む?」
「お前に関係ないだろ」
がま…んも限界。
なんなのこいつ!!
「あんたにお前って言われる筋合いはない!!」
「お前にあんたって言われる筋合いもない!!」
いきなり大声を出して立ち上がった私達にみんなは慌てて「何やってんだよ雄二郎!」「ちょっとなまえどうしたのー?」と声を掛けてくる。
とりあえず座ったものの、空気は最悪のまま。
男の子達は流行の芸人さんのネタをやってくれたり、なんとか盛り上げようとしてくれたけど、そんな気分にはなれずその日はそのままお開きになった。
そして彼とはもう二度と逢うこともないんだろうな、と思っていたんだけど…。
なんの縁かその時のメンバーが何かと気が合うらしく、それからもちょくちょく顔を合わせるようになって。
そして、今。
「なまえー、新しい石鹸どこ?」
「洗面所の戸棚にあるよ」
「おー、サンキュ……ってなに見てんの?」
「大学の時の写真」
「俺も見るー」と言いながら後ろから私を抱き締めてきた。石鹸はどうした?
「懐かしいなー」
「そうだね。ね、初めて会った時のこと覚えてる?」
「あー…合コン?」
「そうそう!雄二郎めちゃくちゃご機嫌斜めだったよね」
「……忘れてくれ…」
私の肩に顔を埋めてうなだれる雄二郎が可愛くてクスクス笑うと、腕の力がぎゅっと強まる。
「なんで機嫌悪かったの?」
「………」
「教えてくれたらキス」
「髪型がイマイチきまんなかったんだよね」
「え…それだけ?」
「俺にとっては重大なんですー」
そんなことであれだけ不機嫌になれるの…?と気になったけど、「はい、ちゅー」と雄二郎からの口づけを受け入れていたら、そんなことどうでもよくなった。
今が幸せならいいよね。
初対面での大ゲンカ
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