めいん(InaU)

□覆水盆に返らず
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レオーネとエステバンが付き合っていることは誰も知らなかった。
レオーネは女好きで知られていたし、事実今でも学校の友人などに誘われて合コンをしたりもしているらしい。
エステバンはエステバンで、恋愛にはまったく興味が無く、第一付き合うという行為に意味を見い出せずに趣味の山登りや愛犬の世話ばかりしていた。
この二人、これだけ聞いてるとまったく反りが合わなそうだが、なんの悪戯だか知らないが、今、付き合っている。

「…あいつらまだやってんのか?」
「さぁねー。やってんじゃない?」

ベッドの中でもぞもぞと動き、レオーネはエステバンを抱き締めた。
エステバンはレオーネを完璧に無視し、自分の緑のiPodを取り、イヤホンを着けた。
聴いているのは曲ではなく、英語のリスニング教材である。このFFIの間にも学校の授業はもちろん進む。だから、少しでも追い付くために暇なときは勉強をしていた。

「真面目だねえ」
「当然のことをしてるだけだ」
「強がっちゃって。でも、お前のそんなとこ、大好きだよ」
「うるさい」

冷たく言い放つと、エステバンは英単語を復唱し始めた。
ジ・エンパイアは選手全員が同じ学校のサッカーチームのメンバーというチームだ。サッカーチームが大変強い学校で、アルゼンチン全土から強い選手が集まってきている私立の学校である。
強豪サッカーチームの一員と言えど勉学の手を抜くのは許されず、成績が悪い場合は最悪退部させられることもある。だからジ・エンパイアのメンバーもまあまあの成績をキープしているが、エステバンはその中で常にトップで、学年でもトップ争いをしている程である。

「勉強するなら灯りつけてあげよっか?」
「いらん」
「またまた恥ずかしがっちやってー」
「恥ずかしがってなんてない!」

その時、ケータイのバイブレータの音が響いた。
暗闇の中、レオーネが手探りでケータイを取る。

「はーいもしもし?」
『もしもし? あ、レオーネ? オレだよー』
「ディエゴか。どうした?」
「みんながこっちのパーティー会場また来ないか、だってさ」

ディエゴの声に混じってメンバーの騒ぐ音が聞こえる。今夜はジャパンを破った記念として、他のメンバーはパーティーをしていた。
が、エステバンは騒ぐことがあまり好きではないのでとっとと自室に戻って読者をしていた。そこにレオーネがやってきたのだ。

「うーん…オレはもういっかなー」
「そっか。エステバンもそうでしょ?」
「うん。……エステバン?」
「え、一緒に居るんじゃないの?」
「なんで分かるんだ?」
「だってさあ、これ、エステバンのケータイだし。仲良しなんだね、こんな夜中に一緒にいるなんてさ。オレ、てっきりレオーネとエステバンは反りが合わないと思ってたんだけど、まさかまさかだな!…ってレオーネ?あれ、おかしいな、レオーネー?レオーネってばー!!!」

話の内容を理解したエステバンがレオーネをすごい形相で睨み付けている。
レオーネは、アルゼンチンに帰国したら絶対にケータイを変えようと決意した。






(よおレオーネ)
(……テレス…)
(びっくりだぜまったく)
(……そりゃどーも)
(おまえら絶対合わねぇと思ったのにな)
(……そっか…。みんな知ってんのか…?)
(ああ。監督まで知ってる)
(そっかぁ……)
(ところでなんでそんな体がボロボロなんだ?)
(…エステバンにマウントポジションで殴られた…『機種が同じなんだからケータイの着信音くらい変えとけこのアホーネ!』って…)
(………)




END.



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暗い所だと手で触って形で物を判断するよね、って話。

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