謙光
□マジで恋する5秒前
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コンビニ前に2つの影。
「こんなに奢ってもろてええんですか?先輩、おおきに〜!」
「ええも何も…。レジん時、俺の目を盗んで善哉を置いたのは誰やったかな。財前クン?」
「ボーッとしてるんが悪いんですわ」
部活帰り、いつも立ち寄るコンビニでのちょっとした攻防戦。
今回は俺の勝ちや。
疲れて朦朧としてる謙也さんの隙を見て、カゴに入れた善哉が2つ。
レジで合計金額を聞いて、動揺してる姿がめっちゃおもろかった。
「早く食べへんと、アイス溶けますよ?」
「お前なー…」
「結局奢ってくれたやないですか。返す事だって出来たのに」
「うぅ…」
謙也さんは悲しそうに呟くと、その場にしゃがみ込んだ。
「ゴチャゴチャ言うてる男はモテんし、アイスも溶けてなくなりますわ」
「もうええ…。普段から甘やかしすぎた俺が悪いんや」
謙也さんは溜め息をつくと、ようやくアイスのパッケージを開き始めた。あ、ソーダ味や。ひと口欲しいかも。
「お前、俺のこと自分の財布や思ってへんよな?」
「誤解ですわー。優しい先輩や思ってます。謙也さんの後輩でほんまに良かった」
俺の白々しい口調に怒るでも呆れるでもなく、謙也さんは目をキョトンとさせた。そんなにおかしな事言うたか…?
「それ、ちゃうで」
「はい?」
「お前が俺の後輩やなくても、俺はお前を甘やかすと思うで?」
「…………」
「財前、どしたん」
どうもこうもあるかいな…。
そんなん言われて、俺は何て返せばええんや。どうせ返事なんていらんのやろうけど。
あ〜アホアホどアホ!!
誰か、この天然口説き魔を何とかしてくれ。
「謙也さん、最悪っすわ」
「な、何でやッ!?」
(善哉2つ分の代償?)
惚れてもうた。