青色受・別館

□落ちていく 6
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選択


「まぶしい。」
玄関の扉が開く。お日様の光ってこんなにも痛かったかな?
「どうしたのだ?」
僕の隣で君が優しく微笑む。相変わらず笑顔を作る事が下手だな。
「日の光がが眩しくってさ…ところでこの後仕事でもあるの?」
「いや。これが私の普段着だが。何か問題でも?」
「……いや。ないです。」
そういえばこの服装以外見た事が無いような…。
まじまじと赤スーツを見つめながら非常階段をふたり並んで下りていく。
「この車に乗り込むのも久しぶりだね。ところで今からどこに行くの?」
「君の行きたい所ならどこへでも。」
シートベルトを締め僕は君に見つからないようにため息混じりにそっと微笑む。
いじわるだな、御剣。僕がもう選択権すら放棄している事くらい分かっているくせに。
地下駐車場のコンクリートの壁を見つめたままの僕の様子を伺おうとシートから体を起こす君の不安そうな顔がウインドガラスに映り込む。
振り向いて今作り得る最高の笑顔で君の不安を取り去るんだ。
「御剣が行きたい所が僕の行きたい所だよ。」
「そ…そうか。特に無いのだがとりあえず出発するか。」
よかった。君の笑顔がまた見れて。
「窓、開けていい?」
久しぶりに感じる外気に少し身震いをし、僕らを乗せた車は春の訪れを感じさせる新芽をつけた街路樹の間を駆け抜けて行く。
特にあてもなく車を走らせ
「夕食は外で済ませていくか?」
「そうだね。何食べようか?」
パーキングに車を止めすっかり日も落ちた繁華街をふたり並んで歩く。
「おい!お前、成歩堂だろ!?御剣も一緒か?」
ひどく懐かしい声がする。
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