離れ

□ 夢のあと 前編
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「御剣コップ持ってきた…よ。」
外からの騒音も届かない。ここは地下の。
僕のお気に入りの仮眠室。ふたりしか知らない秘密の仮眠室。

「寝ちゃったの?」
困るなぁ。掛け布団の上なんかに横たわられるとただでさえしわくちゃの布団が更にくしゃくしゃになっちゃうんだけど。
「君は変わらないね。」
仰向けで手を胸の上で組み目を閉じている君の前髪をすくってみる。指からこぼれ落ちる感触が気持ちよくて。何度も、何度も。
ん。
鬱陶しさからか無意識の内に君はその手を払いのける。
こちらに顔を向け払った手の人差し指の第二間接をそっと唇に当て眉間にシワを寄せる君。
唇がもの寂しいの?それとも
誘っているの?
僕は額にキスをしてニット帽を深めに被り、缶バッチの位置を確認し
「ごめんね。」
君の首の飾りをいとも簡単に解き、小さな白いボタンを一つ一つ外していくんだ。
ん…
再び上を向き唇に触れていた手の甲を額に当てやや不快な表情を浮かべなおも眠っている君。
僕は胸の上で無意識の内に抵抗をしているかのようなもう片方の手の甲にキスをしてそっと横へと下ろすんだ。
「御剣、痩せた?」
両手じゃないときつくて外せなかったベストのボタンが片手で簡単に外れていく。
露わになる胸。死んでるんじゃないかと焦るくらい白い、血色の無い君の肌。
よく見ると青い血管が蜘蛛の巣のように張り巡ぐらせているのが分かる。
その巣に手を絡ませ…
ん…
巣にとまる僕の獲物に指を乗せてみる。
抵抗するかのように硬くなっていく。逃がすまいと摘み潰してみる。
「あっ。」
強くし過ぎたかな?
どうやらお目覚めのようだ。僕の…
「成歩堂…また?」
僕の懐を潤す、最強の手札。
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