赤色受

□年を越えて
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「年の瀬はどこも忙しそうだな。」
「こんなにゆっくりした年末なんてはじめてなんじゃない?……と。ごめん、御剣。」
「…いや。気にすることはない。」

石畳の上をコートのポケットに手を入れ、並んで歩くふたり。
もうすぐ日付が変わるというのにもかかわらず、すれ違う人々が途切れることはない。
「そろそろ深夜零時だというのに、こんなに人がいるとはな。いつもこんなに賑うのか?成歩堂。」
「何、寝ぼけたこと言ってるの?“はつもうで”だよ、御剣。それくらい知っているだろ?」
「ム。当たり前だ!!だが…こうして誰かと訪れるのは、はじめてなのかもしれない。」
「……そっか。」
御剣は年末いろんな事があり過ぎたから、クリスマスやお正月はまともに過ごした事が無いのかも知れない。
石段をのぼりながらこのしんみりした空気を断ち切ろうと成歩堂は話題を変える。
「ねぇ、御剣は何をお願いするの?」
やれやれ……とでも言いたげに肩をすくめ御剣は
「成歩堂、初詣は自分の願いを叶えてもらう行事ではないのではなかろうか?」
右側に並んでのぼる成歩堂に冷ややかな視線で返事をする。
先に石段をのぼり切り、成歩堂は御剣を見下ろすような形で指をさし反論する。
「異議あり!一年に一回だよ?どんな願いも叶えてくれるって!!神さまはそんなに石頭じゃないよ。…誰かさんみたいにさ。」
「うムムムム……。」

さい銭箱に小銭を投げる。鈴を鳴らし、ふたりは目を閉じ手を合わす。
「……………。」
「……………。」
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