離れ
□ 遭難 前編
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乱れる長い髪。喘ぐ紅を引いた唇。
怪しく光る眼鏡。緩んだネクタイ。
場所は、警察局
揺れる乳房。這いずり回る黒い手。
黒すぎる肉棒。加え込む赤い粘膜。
ここは、局長室
外は嵐。
雨が窓に打ち付け、雷が五月蝿いくらい轟き、部屋の会話はかき消される。
「またよろしくね。巴ちゃん。」
「失礼します。局長…」
一礼して局長室を後にする女検事。
黒皮の手袋をした体格のいい中年男が、手をヒラヒラと部屋を後にする女検事に送る。
「さてと……」
揉み手をしながら机から離れ、窓の外を眺める。
「換気できないなぁ…これ。」
情事の後の特有の臭いを逃がしたい部屋の主、厳徒海慈。
地方警察局の警察局長だ。
彼の肩書きで手に入らないモノはない。
いろんなモノを手に入れてきた。
先程の女もその内のひとつだ。
「空すらも僕のモノになればいいのに…」
窓に手を当て内側より雨粒をなぞる。
「ん……だれ?」
窓に映る白い人影。一礼をしてまた窓に映り込む。
「無断で入室するような形になり申し訳ありません。何度ノックしても返事がありませんでしたから。」
厳徒が振り向き、にこやかな笑みで無断入室をした人物を迎える。
「なんだ。御剣ちゃんじゃない。
最近どう?泳いでる?」